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(4)全開ガール [ドラマレビュー]

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『 全開ガール 』
第4回
( 2011年 フジテレビ 公式サイト
演出:川村泰祐 脚本:吉田智子 出演:新垣結衣、錦戸亮

今回も前回のレビューで触れた大人と子供の対比によって物語が巧みに展開されました。終盤にかけて山田ビー太郎(高木星来)が果たすことになる役割の大前提となる重要な描写が序盤に存在していたのでその点から紹介してみたいと思います。

今回の序盤のシーンで鮎川若葉(新垣結衣)が汐田そよ子(蓮佛美沙子)の「(山田草太に)告白します」という言葉に思わず歩みを止めてしまうという描写があります。これは若葉が潜在意識の中で山田草太(錦戸亮)に対して特別な感情を抱いていることを窺わせるものです。このあたりの若葉の未だ無自覚な感情には、第1話における草太の「自分が謝罪したいと思った時にはちゃんと謝罪をする」という考え方や、第2話における草太の「感謝の気持ちは伝えたいときにしっかりと伝える」 といった草太独自の価値観を目の当たりにしたことが大いに影響していると思われます。つまり、今まで若葉が知らなかった価値観を教えてくれた草太の存在を特別視するに至る下地はしっかりと描かれてきているわけです。そして、第3話では「泥んこ開き」のエピソードを通じて、そんな草太と若葉が実は共有する価値観を持っていることが描かれており、若葉が草太に対して「特別な感情」を持つに至るお膳立てはしっかりと整っていました。そのような若葉の微妙な潜在的感情を表現し、確認することができるのがこのシーンだったと考えられます。

したがって、若葉が草太のことを貶(おとし)めて「ダンゴ虫」と呼ぶのは、自分が抱く草太に対する特別な感情を排除しようとする意思が無意識に働いているからで、この種の若葉の意思が反映された「ダンゴ虫」という言葉を「世の中に役に立たない生き物はない」という論理でビー太郎が打ち消し、草太の人格を彼なりに守ろうとしたところは、技術的な観点で言えば子供の使いどころの巧さだと思います。この一連のシーンで若葉は、ビー太郎が失踪したのは自分の言葉に起因するものと考えて強い責任を感じてしまったわけですが、ビー太郎は言葉は言葉でも大人が思いもよらないポイントに反応していました。

 「あなたは自分に自信がないから、ビー太郎君を理由に逃げているだけです。ビー太郎君のせいで夢を諦めたと言って」
「やっぱりあなたは、何にもできないダンゴ虫です」

若葉は前段の言葉をもってビー太郎を傷つけたと思い込んでいたわけですが、実際にビー太郎が強く反応したのは後段の「ダンゴ虫」という単語であって、傷ついたというよりもその言葉の意味を必死に真っ直ぐ読み取ろうとした子供ならではの純粋な思いがそこに存在していました。この大人と子供の認識の齟齬(そご)は、そのままビー太郎の「子供らしさ」を表現していると同時に、前回のレビューで触れた子供が大人(主人公)に「物事の本質」を気づかせるという図式にもなっています。

そして極めつけがその後の豊海橋のシーンにおける若葉とビー太郎のやりとりです。若葉はビー太郎によって草太の「真価」を気づかされたわけですが、それを俄(にわ)かには認めがたいという心情は、もはや若葉の性格を熟知している我々なら容易に理解できるところだと思います。そして、若葉はその未体験の感覚に大いに戸惑いを見せます。

 「それ、恋わざわい、ってやつじゃないか?」
「これが、いわゆる・・・絶対ちがいます」
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ここにもまた子供が子供ならではの鋭敏な感覚で大人(主人公)に先んじて物事の本質を理解しているという図式が存在しているわけです。また、「恋わずらい」という単語を勘違いして覚えてしまったところも「子供らしさ」だし、必死に否定する若葉に対して無邪気に笑顔を見せるビー太郎の姿なども子供という存在に対する作り手の冷静かつ適確な視点が盛り込まれているところだと思います。さらに、最初に触れた若葉が思わず歩みを止めるシーンのおかげで、この種の若葉の特別な感情の芽生えが視聴者にとっては決して唐突ではなく、二人の恋を見守っていくという我々がこのドラマに向き合うスタンスを定義してくれていることも付け加えておきます。結局、若葉も草太も自分の気持ちをビー太郎から教えられたことになり、いよいよこの物語の本筋が本格的に動き始めたといったところでしょうか。今後もビー太郎と桜川日向(谷花音)を使った物語の展開に期待し、注視していきたいと思います。

演出面についてもひとつだけ。今週はサードの川村泰祐監督でしたが、最後の最後にやってくれました。今回は第4話にして初めてエンディングテーマが本編から使用されています。それも2段階のイントロを効果的に利用して、若葉の「私にとってあなたは災いです」という台詞とそよ子の告白を対比させて印象付けるという高度なテクニックが用いられています。そしてボーカルが入るところでエンドロールに突入し、次回への期待感を盛り上げる・・・本当に気持ちのいい演出でした。これはこの曲を何度も何度も繰り返し聴いた人だからこそなせる業だと思います。私は先日ラジオでこの『ツブサニコイ』という曲を初めて通して聴いたのですが、本当にいい曲です。このイントロを聴いたとき、これを本編で使わない手はないし、これまでも使うチャンスはあったのではないかと思っていたのですが、その矢先に今回の演出ですからちょっと感動ものでした。作曲は劇伴を担当しているFace 2 fAKEなので本編にぴったり合うのは必然かもしれません。

このドラマのレビューはもっと軽い感じで書いていくつもりでしたが、結局本気で書いてしまいました・・・。作り手の丁寧かつ巧みなプロの仕事を目の当たりにしたら、レビューも手を抜くわけにはいきません。このドラマにかける作り手の想いに我々も真剣に向き合っていかなければなりません。

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