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(9)大切なことはすべて君が教えてくれた [ドラマレビュー]

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『 大切なことはすべて君が教えてくれた 』
第9回
( 2011年 フジテレビ 公式サイト
演出:葉山裕記 脚本:安達奈緒子 出演:戸田恵梨香、三浦春馬、武井咲

私がこのドラマを観ることで得られた数少ない収穫のひとつが葉山裕記監督の繊細な演出を知ることができたことです。
第4話のレビューでも触れましたが、葉山監督は登場人物の感情の要所を捉えるのがとても上手な方だと思います。
主人公二人の感情についてはそもそも説得力を有していないので、
今回も佐伯ひかり(武井咲)についての感情表現から、葉山演出を掘り下げてみたいと思います。

来週に控えた最終回の焦点が主人公二人の結婚であることを考えると、今回は主人公の周囲の状況、
とりわけ佐伯ひかりを取り巻く状況に決着をつけることに時間を割かなければならなかったでしょう。
今回は佐伯ひかりの心情描写のためのシーンが3つありましたので、
それぞれのシーンを演出的側面から掘り下げてみたいと思います。

このドラマの序盤で描かれた佐伯ひかりの柏木修二(三浦春馬)に対する屈折した愛情表現の根底には、
自らが「欠陥」と表した先天的に抱える病気と交通事故で失った姉へのコンプレックスがありました。
ひかりがそれらを克服していく過程を描くことがこのドラマのもうひとつの側面ですから、
ひかりを取り巻く状況に決着をつけるためには、彼女の「心の成長」の到達点を明確に表現しておかなければなりません。
前回まででも、ひかりが辿り着いた答えのひとつとして、自分の過去、
とりわけ姉の死から目を背けずに真正面から向き合おうとするひかりの態度が描かれてきましたが、
今回も改めてそのあたりのひかりの心情を印象付けるシーンがしっかりと盛り込まれていました。

ひかりの母は、家族4人で過ごした家を売ることで、ひかりの姉・ゆかりの存在を必死に忘れようとしているわけですが、
ひかりは家のリビングの床についた傷を見て、姉の誕生日を家族で祝った幸せな日々を愛おしく思います。
このシーンでは合計5つのショットでひかりの表情を捉え、ひかりの「決意」を印象付けています。
下に示した3つのショットはいずれも、ゆったりとしたズームインを使用しており、
ひかりの表情をもって彼女の内面を表現し、「心の成長」を印象付けようとする演出が試みられています。

  A (Z.I.)
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 B (Z.I.)
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  C (Z.I.)
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Aのショットは、自身が辿り着いた答えが間違っていなかったというひかりの「確信」を表現していて、
床の傷を見て、やはり姉との思い出を消し去ってはならないということを強く実感した瞬間の表情です。
Bのショットでは、母を旅行に誘う時のひかりの穏やかな表情を捉えることによって、
彼女の気持ちには、もはやいかなる迷いも存在しないことが表現されています。
そして、Cのショットは、母の気持ちを翻せないことを知った直後の表情ということになり、
姉との思い出を自分ひとりで背負っていこうとする新たな決意と強い意思が読み取れます。

このような演出手法は第4話の冒頭でも試みられていて、ひかりの心情をその表情のみで語らせ、
ひとつひとつの表情を印象付けることによってはっきりと巧みにその内面を描くことに成功しています。
私は登場人物の表情をもってその心情を印象付けようとするこれらの葉山演出を高く評価しています。

ひかりの心情の変化を印象付ける2つ目のシーンが、佐伯ひかりが柏木修二と進路面談をするシーンです。
このシーンでひかりが見せる表情からは、序盤に修二に対して見せていた虚勢も強がりも鳴りを潜め、
白紙の進路表とは裏腹に、自分の生き方に微塵も迷いがないすっきりとした素直な笑顔になっています。

 「私、ひとりじゃないから」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2011032406.jpg

第6話でひかりが修二に言った「ひとりの方が楽」が100パーセント強がりだったことを考えると、
何の迷いもなくひかりの口から出たこの台詞は、彼女の成長を端的に表現したものということになるでしょう。
ここでいう「ひとりじゃない」の意味が、「姉と共に生きていく」という決意表明であることは言うまでもありません。
そして、このシーンでひかりが口にした「冗談です」というキーワードがその後のシーンにつながってきます。

ひかりが修二との関係を「冗談」にできるのは、
ひかりが修二への恋愛感情を彼女なりに処理することができた証であり、
ここにもひかりのひとつの成長を見出すことができます。
しかし、上野駅でひかりを見送る修二に対して、「恋人同士に見えるかな」とひかりが冗談を言ったのは、
修二を安心させるためであり、あくまでも「ひとりで」この旅に臨もうとするひかりの意思が窺えます。
前のシーンでひかりが口にした「冗談です」にこのシーンでは、
もうひとつの別の意味が込められているところは、大変巧みな趣向だと思います。

さらに、ひかりの「さようなら」という言葉を打ち消すために電車に乗ってしまった修二に対して、
ひかりが再度口にした「冗談」というキーワードには否定句が継がれ、表面的には正反対の意味となります。
しかし、この台詞の裏側を読めば、結局はこれまでと同じ意味を持つ言葉として投げかけられたものだと解釈できるのです。

 「・・・冗談・・・じゃなくて・・・」

ひかりがすでに修二との関係および修二に対する感情に折り合いをつけていることを考えると、
この状況で修二に対して素直に「もう少し一緒にいて欲しい」と言えるのは、
ひかりがさらにもうひとつ階段を上ることができたことを意味すると私は解釈します。

 「じゃあ・・・それまででいい・・・」・・・・・・・・・・・・・・・・・・2011032407.jpg

私はこのときのひかりの表情から、彼女の「心の成長」の描写は完了したと感じました。

最終回についてこの方面のみ言及しておくと、
水谷亜弥(内田有紀)の説得を受け入れたひかりの父親(神保悟志)が、
母親(宮本裕子)との間に存在したわだかまりを解消すべく積極的さを見せ、
最終的に両親そろってひかりを旅先に迎えに行くというような流れを予想しています。

さて、このドラマをそれなりに丁寧に観てきた人ならば、
今回、佐伯ひかりが見せる表情や仕草、あるいは台詞から伝わってくる印象といったものが、
ひとりの女性としてかなりアカ抜けたものになっていることにお気づきかと思います。
このドラマのストーリーの一要素が前述のとおり、ひかりの成長記だとすれば、
演出的にはこのドラマを通じて序盤と終盤で彼女のビジュアルに変化を付与するのも重要な仕事になってくると思います。

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第1話
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第9話

これは印象の問題ですから、ちょっと曖昧かもしれませんが、
今回のひかりは、序盤と比して都会的で洗練された女性に成長したという印象を私は持ちました。
以前、『耳をすませば』(1995年 東宝)のレビューで、
主人公の成長が髪の毛の色の変化で表現されているということに言及したことがあります。
ひかりのヘアースタイルということで言えば、分け目を変えるだけで女性はとても印象が変わるものです。
ひかりの髪の毛の色が実際に明るくなったのかは確認できなかったのですが、
技術的にはライティング、美術的にはメイクアップなどによって
ひかりのビジュアルにも変化を印象付ける演出が施されているのは確かなような気がしています。

この低レベルのドラマにおいて、佐伯ひかりについての描写のみを振り返ると、
ストーリー上もキャラクター表現上も賞賛に価するものが多かったし、
さらに言えば、本作を通じて実感した武井咲ちゃんの女優としての大きな成長を思うと、
やはり佐伯ひかりを主人公にして別テーマでこのドラマを作り上げていれば、
どんなに魅力的なドラマに仕上がっていただろうかと思ってしまいます。

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