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咲くやこの花 [ドラマレビュー]

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『咲くやこの花』
(2010年 NHK=NHKエンタープライズ 全10回)
監督:佐藤峰世 ほか 脚本:藤本有紀 主演:成海璃子
          Official / Wikipedia / TV Drama DB          

「寺田農、これ見よがしの悪役ぶり・・・」 

NHKの土曜時代劇は、『オトコマエ!』に代表される軽いタッチの時代劇を提供してくれていますが、
本作も正統派時代劇ではなく、江戸時代を舞台に百人一首かるたを題材とした感情移入しやすい作品となっています。

百人一首というと、ちょっととっつきにくいと思われる部分があるかもしれませんが、
現在に伝わっている和歌というのは、きわめて普遍的な日本人的感覚を歌ったものが多く、
特に恋の歌を通じて表現されている恋愛感情というものは、時代を超えて共感の念を抱かずにはいられません。

本作においては、全10話の中で毎回概ね1~2首の和歌を取り上げて、
和歌を通じて読み取ることができる平安時代の日本人の恋愛感情と
江戸時代の市井に生きる日本人の恋する気持ちの普遍性を表現しています。
そして、その種の感情というものは、現代に生きる我々視聴者にも等しく共感を呼ぶところだと思います。

それらのテーマ表現にあっては、
主人公・こい(成海璃子)の深堂由良(平岡祐太)に対する恋心を中心として展開していくわけですが、
物語が二人の恋の話に終始せず、その周囲にいくつもの恋の物語がちりばめられているというのも興味深いところです。

特に、こいの母・そめ(余貴美子)とうなぎ屋の主人・信助(佐野史郎)との関係は、
序盤から丁々発止の口喧嘩で我々を楽しませてくれましたが、
中盤には一転して二人の
過去をめぐるすれ違いの関係が、百人一首の和歌を通じて明らかになります。
そして、そのことが彼らが痴話げんかをする理由と繋がってくると、とても切ない情感が見事に表現されました。
他にも、はな先生(松坂慶子)の想い人のエピソードやそめと亡夫との関係、
こいのライバル・しの(寺田有希)の百敷屋の若旦那へ片想いなどが百人一首に託して表現されていきます。

さて、このドラマのもうひとつの根幹を成していたのは、深堂由良のあだ討ちのエピソードだったと思いますが、
もう少し善悪の図式をわかりやすく工夫して表現してほしかったです。
序盤から寺田農さん演じる門田伯耆守(かどたほうきのかみ)がいかにもという悪人面で登場して、
彼こそが由良の仇であることを匂わせますが、物語上は由良の仇であることが明らかになるのは中盤以降であり、
視聴者的にはいまさらそんな事実を突きつけられても「もう知ってますよ」という感覚が先にきてしまって、
その点では終盤に向けての盛り上がりを欠いてしまったような気がします。

幕閣のひとりである門田伯耆守は、呉服商・百敷屋(大和田伸也)に大奥への納品の便宜を図って、
賄賂を受け取っており、そのことを告発しようとした由良の父を亡き者にしたわかりやすすぎる悪役ですが、
終盤(第9話のラスト)に突如として彼が熱烈な「国学」信奉者であることが明らかになります。
彼が「百人一首腕くらべ」を企画したのは、純粋に百敷屋からディベートを受け取るためだと思われていただけに、
その事実は個人的には大きなサプライズでした。

しかし、これについても終盤にきていまさらそんな事実を突きつけられても、視聴者的には盛り上がり切れません。
私は、百人一首および和歌を江戸時代における国学の一端と位置付ける視点が最初からあったのならば、
そのことをストーリーを盛り上げるためにもっと生かすことができたのではないかと思っています。

たとえば、序盤は門田伯耆守を百人一首が大好きな「人のいい武家のおじさん」にしておいて、
次第に国学への行き過ぎた信奉ぶりが明らかになってゆくことで、
由良の仇としてのもうひとつの顔が浮かび上がってくる、というような展開の方が、
サプライズがあって物語的には盛り上がったかもしれません。
この場合、寺田農さんでは成立しなかったかもしれませんが・・・

とはいえ、こいが御前試合ではな先生と対決することになるという展開だけでも十分にサプライズだったし、
最終回の盛り上がりにも貢献していたので、概ねいい脚本だったと思います。
そして、何より作者の百人一首への特別な想いが伝わってきた点が好感を持てます。

こういうドラマを通して百人一首や和歌といった日本の伝統文化が再注目されたらいいですねぇ(^^)。。。

評価 ★★★★


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火の魚 [ドラマレビュー]

『火の魚』
(2009年 NHK広島放送局 53分)
監督:黒崎博 脚本:渡辺あや 主演:原田芳雄、尾野真千子
          Official / Wikipedia / TV Drama DB          

第64回(平成21年度)文化庁芸術祭賞大賞受賞作品。

高い評価を得た作品ですが、地上波での全国放送は今回が初めてということです。
本作は地方局の制作でローカル向けに作られたテレビドラマですが、
作り手の作品に対する熱い想いと愛情が伝わってくる秀作だと思います。
芸術祭では『官僚たちの夏』(TBS)や『白州次郎』(NHK)を退けての大賞受賞であり、
映画やドラマというものは低予算でも作り手の気持ち次第で、
素晴らしい作品を生み出せるということを改めて思い知りました。

私は、先週の土曜日の夕方にザッピングをしていて、
BSで放送されていた本作をたまたま観ることができたのですが、
そんな偶然がなければ、大げさでもなんでもなく、このドラマのことを永遠に知らずにいたかもしれません。
私はそんな偶然を幸運だと思えますが、
多くの人が未だにこのドラマの存在を知らずにいるということもまた事実であり、
その点は非常に悲しむべきことです。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

本作は、文学を原作としているだけあって、ちょっと難解な作品と言えるかもしれませんが、
そういう作品というものは見るたびに新しい発見があるものです。
私は、このレビューを書くにあたって合計3度拝見しましたが、
このドラマを面白くしているのは、「世俗」と「隠遁」の対比だと感じました。

「隠遁」とは、言うまでもなく主人公の作家・村田省三(原田芳雄)の晩年の生き方を示すものであり、
ガンによって1度は死を覚悟した彼が到達した境地です。
彼はわずらわしい世俗から離れた故郷の瀬戸の島で悠々自適の生活をしながら執筆活動をします。

「世俗」とは東京から村田の原稿を受け取りに来る編集者・折見とち子(尾野真千子)の存在そのものであり、
彼女のきっちりした身なりと言葉遣いは村田が捨てた世俗との繋がりを象徴的に表現しています。
特にとち子が使う慇懃な敬語は、図らずも村田の気持ちを逆なでするようなクールな響きを持っており、
村田の鷹揚な態度との対比は実に滑稽で、序盤のみどころとなっています。

それでも村田はとち子の影絵劇に触れて、とち子に対する特別な感情を抱くようになってしまいます。
そのような種類の感情というのは、村田が否定する世俗的な感情に他ならず、
これを打ち消そうとするわけですが、その方法が直情的な「意地悪」であるところが、
かえって村田を「俗物」にしてしまっています。

そして、とち子の病気を知った村田が東京に見舞いに行くときには、
白のスーツにソフト帽という正装であるところが、
世俗への回帰を表現しており、とち子への贖罪の気持ちが込められています。
そんな村田に対してとち子も病人でありながら紺のスーツで現れますが、
この身なりは彼女が原稿を受け取るために島を訪れたときと同様の正装であるにもかかわらず、
このシーンでは、女性的なプライベートな気持ちが込められていると感じられるのも興味深いところです。

しかし、とち子の表情には化粧気がなく、生身の彼女をさらけ出したものであり、
彼女もまた死を覚悟した隠遁生活に入ったことが伝わってきます。
そして、とち子が語る言葉は、やはりここでも敬語であるにもかかわらず、
以前とはまったく違った響きをもって伝わってくるところが、
村田ととち子の立場の変化を表しているような気がします。
つまり、このシーンにおいては世俗に回帰した村田と隠遁に入ったとち子の対比に逆転しているのです。
また、このシーン最後のカットは、世俗にいる村田が病院に戻るとち子を見送るというものであり、
何か象徴的な意味が込められているような気がしてきます。

「タバコ吸いてぇー!」

そして、村田が思いっきり俗っぽい事を言って、
再び島での隠遁に戻るという終わり方は実にさっぱりとしています。
これを機に自らの死を意識した本当の意味での隠遁生活が始まるのかもしれません。
それとともに変人ぶりは鳴りを潜めるのかもしれない、と想像するのも面白いところです。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

2010032102.jpg尾野真千子ちゃんのお芝居をガッツリ見たのはこれが初めてなんですけど、
改めてすばらしい女優さんだと思いました。

・影絵劇を披露するシーン
・金魚を殺すシーン
・花束を受け取る瞬間の表情

この3つを観ていただければ、彼女の女優としての非凡な力量がすぐに理解できると思います。

評価 ★★★★★


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泣かないと決めた日 [ドラマレビュー]

『泣かないと決めた日』
(2010年 フジテレビ=共同テレビ 全8回)
演出:石川淳一 ほか 脚本:渡辺千穂 主演:榮倉奈々
          Official / Wikipedia / TV Drama DB             

「何事も一日にして成らず・・・深・・・くないっ!」

第1回から15分拡大で始まったこのドラマですが、序盤はいまひとつ視聴率が振るわなかったようです。
私の第1話を観た率直な感想は、いまどきこんなドラマが流行るんだろうかという疑問符が付くものでしたが、
数字はそれを反映したものとして表れました。

具体的に言えば80~90年代の大映テレビを髣髴とさせるストーリー展開と演出がどこか「古さ」を感じさせ、
私などはかえって懐かしさのようなものを感じ取ってしまったのですが、
このドラマがターゲットとしている「社会に出ようとしている若い世代」に受け入れられるのかは未知数でした。

それでもこのドラマがかつての大映テレビと一線を画すのは、
「いじめ」がただただ理不尽なものとして存在しているのではなく、
いじめる側といじめられる側それぞれが抱える問題点に言及している点だと思います。

よく「いじめ」には「いじめられる側にも問題がある」などと言いますが、
このドラマでは榮倉奈々ちゃん演じる主人公・角田美樹が
いじめられてしまう要因のひとつを彼女の妹(川口春奈)の存在に求めています。
自分のせいで足に障害を負ってしまった妹に対する負い目が美樹の性格を卑屈にしてしまっており、
理不尽な先輩のもの言いをついつい受け入れてしまうという図式です。

このドラマのテーマのひとつは主人公がそんな卑屈な性格を克服していく過程を描くことにあり、
時に失笑を誘う突拍子もないストーリー展開と大げさな演出とは対照的に、
テーマ表現の方向性としては「意外に」しっかりしていたと思います。
また、「いじめ」の描写ばかりに目が行きがちですが、
新入社員が仕事にどのような姿勢で向き合うべきかという視点が序盤から盛り込まれていたところも見逃せません。

さて、このドラマが終盤尻上がりに上げていった視聴率に貢献していたのが、
杏ちゃん演じる主人公の同僚・立花万里香の存在だったというのは言うまでもないでしょう。
一見理不尽に思える先輩社員の「いじめ」については、
その背景が語られることによって、「いじめ」の構図を明確に表現していきますが、
立花万里香の言動ついては、純粋に理不尽であり、
彼女が持つある種の不気味さが物語を大いに盛り上げてくれました。

つまり、「明確な背景があるいじめ」と「ただ理不尽ないじめ」という2面表現が
このドラマの根幹を形成しており、そのことがそれぞれリアリティとドラマ性の双方に貢献していたと言えます。

それでもまさか杏ちゃんが実力行使に出るとは思いませんでしたが・・・(苦笑)
私などはあのシーンを爆笑しながら見てしまったのですが、
作り手がどういうつもりであのシーンを撮っていたのか知りたいものです。
笑うところですよね?

最後に最終回を観ていて気づいたことがあります。
このドラマの「いじめ表現」を2面表現と書きましたが、
杏ちゃん演じる立花万里香の言動の背景にあるものにも実はしっかりと言及されていました。
そのことを思い出したのが、最終回の終盤に登場する万里香の荷物の宛名です。

「田園調布」

そうでした、中盤万里香の実家が登場して、
お父さん(団時朗)が挨拶に来た婚約者(要潤)を「理不尽」に殴るシーンがありました(笑)。
この父にしてこの娘、というのは冗談ですが、
何不自由なく欲しい物を手に入れてきたお嬢様育ちが一連の言動の背景にあったとすれば、
納得いかないでもありません。いや、それでも納得いかない気もしますが・・・

その意味では、
終盤ドラマを盛り上げた2面表現がどこまで製作者の意図するところだったかは判断しかねるところです。
結果オーライでしょうか、プロデューサーにお聞きしたいところです。

評価 ★★★☆☆


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まっすぐな男 [ドラマレビュー]

『まっすぐな男』
(2010年 関西テレビ=MMJ 全10回)
演出:三宅喜重 ほか 脚本:尾崎将也 主演:佐藤隆太、深田恭子
          Official / Wikipedia / TV Drama DB            

「最終回に石坂浩二登場・・・」 

『まっすぐな男』は、近年では珍しく、
ほぼテレビドラマ専業の制作会社・メディアミックス・ジャパンが制作を担当しています。
関西テレビ×MMJの近作といえば、『チームバチスタの栄光』や『白い春』ですが、
なんと言っても最高傑作は『結婚できない男』でしょう。
そして私は、『まっすぐな男』をというタイトルを目にしたとき、
『結婚できない男』のように主人公の奇行ぶりが笑いを誘うシュールなコメディを期待しました。

本作においては、奇行に走るのが佐藤隆太君演じる主人公というよりも、深田恭子ちゃん演じるヒロインだったものの、
前半部分においてはMMJらしいコメディのテイストを随所に感じられるドラマになっていたと思います。
しかし、ヒロインの妊娠が発覚し、主人公の気持ちがヒロインに向き始めると、
ドラマの様相は一変し、シリアスムードの方が強調され始めます。

もっとも、主人公の真面目さからくる「まっすぐさ」が、
ヒロインの生き方を変えていくという点が、ストーリー上の肝なので、これは既定路線だったのだと思いますが、
終わってみると私が期待していたようなドラマではありませんでした。

最終回において、そのような私の気持ちを確認させてくれたのが、
主人公が勤める会社の社長として石坂浩二さんが登場したときです。
石坂浩二さんは、私の感覚で言えば、どう考えてもこのドラマには似つかわしくないと思ってしまいました。
石坂さんといえば、『沈まぬ太陽』における会長役が記憶に新しいところですが、
その重厚な演技は社長役などにはピッタリだとは思います。

しかし、本作の前半部分におけるコメディの印象に比重を置いていた私にとっては、
石坂浩二さんの重厚なお芝居に違和感を抱いてしまいました。
石坂さんが台詞の一言一句に気持ちを込めてお芝居をしているのがヒシヒシと伝わってくるだけに、
前半部分においてコメディモード全開だった佐藤隆太さんや宇梶剛士さんとの絡みには滑稽さすら感じてしまいました。

このドラマは、視聴者が最終回を見終わって初めてコメディではなかったことを認識するという意味で、
視聴者がストーリー展開に置き去りにされてしまったドラマだったと言えるでしょう。
製作者が最終回に来て石坂浩二さんをキャスティングしたのは、
製作者サイドと視聴者の気持ちの齟齬を象徴しているような気がします。
作り手はとっくの昔にドラマのテイストを転換していたんでしょうけど・・・

それと、最終回のエピソードって、「贈賄」ですよね?
「まっすぐな男」じゃなくても社長に異議を唱える人間がいるのが普通の会社だと思う。
最初から最後まで稚拙な脚本でした、、、『結婚できない男』と同じ尾崎さんなんですけど・・・

評価 ★★☆☆☆


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