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実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [映画レビュー]

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [DVD]

[ DVD ]
実録・連合赤軍 あさま山荘への道程
( CCRE / ASIN:B001MSXHN6 )

『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』
(2008年 若松プロダクション=スコーレ 190分)
監督:若松孝二 脚本:若松孝二、掛川正幸、大友麻子 出演:坂井真紀、ARATA
          Official / Wikipedia / allcinema
          

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(C) 若松プロダクション

まず前提としてこの映画はドキュメンタリー映画に近い作品と位置づけた上でレビューを書かせていただきます。いわゆる「昭和史」に疎い人には「なんのこっちゃ」ということになること間違いなしだと思いますが、そもそもそういう方がこの作品を手に取ることはないと思いますし、逆に「昭和史」に興味を持った方には避けて通れない作品ということになると思います。

私は、私の世代の多くの人たちがそうであるように「あさま山荘事件」そのものは知っていても、それがどうして起こったのか、あるいはどういう意味を持っているのかについて考える機会はそう多くはありませんでした。私がこの映画に興味を持ったきっかけは、前にレビューで取り上げた『クライマーズ・ハイ』の原作に「大久保・連赤」というキーワードが頻繁に登場することからでした。連合赤軍による「あさま山荘事件」が長野県軽井沢の別荘地でおきたことは知っていたので、群馬県との関連がわからず、調べていたところ、「山岳ベース事件」の存在を初めて知りました。

そして「山岳ベース事件」を主に描いた『光の雨』(2001年 シネカノン)という映画の存在を知り、早速手に取りました。この映画は、「一連の連合赤軍事件を題材にした映画を撮影する若者たち」を描くという変わった手法を採っており、一連の事件は「劇中劇」として描写されていきます。劇中劇と映画を作る若者たちの話を行ったり来たりするので、途中混乱することもしばしばでしたが、観終わってからこのように複雑な構成にした意味がよくわかりました。

20世紀の若者が引き起こした連合赤軍事件は、21世紀の若者がイメージするには、時代の空気が現代とは余りにもかけ離れていて、疑問符でしか表現できないような事実だと思います。『光の雨』はそれを前提に作られた映画であって、「劇中劇」を演じる若者たちは、率直に連合赤軍が起こした一連の事件を理解できないものだとしながらも、そのような歴史的事実が現実に起こったことについては受け入れていきます。彼らの目というフィルターを通すことにより、あの衝撃的な事件に対する我々の印象は和らぎ、我々が歴史的事実をより良く理解する一助となっています。

それに対して本作は、「実録」のタイトルが示すとおり、当時のニュース映像を交えながら、当時起こったありのままを歴史的事実に沿って淡々と描いていきます。そのため本作は3時間超という大長編作品となっており、登場人物の多さと事件の複雑さから、予備知識がまっさらな状態では、観ているのは苦痛でしかないと思います。

連合赤軍事件及び本作を理解するためには「総括」というキーワードをまず理解する必要がありますが、本作では「総括」の客観的定義が説明されることはありません。原田芳雄さんによるナレーションは歴史的事実を淡々と語るのみで、それぞれの事実に深く踏み込むことはありませんし、登場人物による回想や心情の吐露といったものもありません。したがって、本作は非常に難解な作品であり、歴史の教科書の映像化と言えばわかりやすいかもしれません。逆に言えば映像によって歴史の勉強ができるのであって、そのことによって本作を否定するものではありません。

我々は、本作の対極に『光の雨』という作品が存在することを喜ばなければなりません。『光の雨』の登場人物は連合赤軍の若者の気持ちを理解しようと必死に演じようとしてくれています。私は本作を観る前に『光の雨』をご覧になることをお勧めします。また、本作を観るならば、観た後に関連書籍を読んで勉強するような意欲と興味がないと観る意義はないと思います。その意味では本作は非常に敷居の高い作品ということになります。

「映画」として評価するには難しい作品です。

総合評価 ★★☆☆
 物語 (ほぼノンフィクションにつき評価不能)
 配役 ★★★☆☆
 演出 ★★★☆☆
 映像 ★★☆☆☆
 音楽 
★★☆☆☆

※このレビューは、私がYahoo!映画のユーザーレビューに投稿したものをより多くの人にご覧頂けるように加筆・修正して転載したものです


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フライング☆ラビッツ [映画レビュー]

フライング☆ラビッツ [DVD] [ DVD ]
フライング☆ラビッツ
( アミューズソフトエンタテインメント / ASIN:B001K90ISE )

『フライング☆ラビッツ』
(2008年 東映)
監督:瀬々敬久 脚本:山名宏和  主演:石原さとみ
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(C) 2008 「フライング☆ラビッツ」製作委員会

冒頭から元フジテレビアナウンサーの八木亜希子さんがCA役で登場したことは個人的にはうれしいサプライズでした(^^)。 演技の巧拙とかは関係なく、役者さんが演じているCAよりもリアリティあったのは、八木さんがいつもアナウンサーとして醸し出している雰囲気がCAと重なるものがあるんだと思います。意外に映画出演が多い八木さんです。油断できませんねー。以上はただの八木亜希子ファンの感想でした(^^ゝ。

さて、本作のテーマの面白さは、単純明快に言えば、「キャビンアテンダント」が「バスケットボール」をやる、という部分に集約されていたと思います。「スチュワーデス物語」のように「CA」の成長だけを描いた青春モノでもなく、「バスケットボール」だけを描いたスポ根モノでもないはずです。両者が結合して初めて新しい物語が生まれるわけですが、結局最後までCAがバスケットボールをやることの動機付けが明確になることはありませんでした。

本編で主人公は上司から「CA」と「バスケットボール」を両立させることを求められます。CAという職業の専門性・特殊性などを鑑みると、他の実業団の選手(誤解を恐れずに言えば普通のOLさんたち)とは比べようもないぐらい両立は容易ではないはずです。しかし、本作ではその両立の苦労を授業中に眠ってしまうというような物理的な疲労の表現で片付け、気持ちの中で両者をどのように折り合いをつけるのかといった精神的な苦労が描かれることはありませんでした。「CA」も「バスケットボール」も大好きだから、どっちも一生懸命やりたい!だから両立できた、という表現はちょっと強引過ぎます。

本作のテーマの面白さが成立するためには「CA」と「バスケットボール」を結びつけるエピソードが不可欠でした。例えばですが、閉鎖的な機上勤務でのCAのチームワークがバスケットボールの狭いコートの中でのチームプレーと通じるところがあるとか、あるいは常に穏やかに他者を思いやるというCAの職業的特長がチームを強くしているんだというような表現がないと、彼女たちが選りによってバスケットボールをやってるという動機付けが不明瞭になってしまいます。ただ好きでやってるのなら他の社内サークルと同じじゃないですか?これではこの物語の存在意義すら疑われてしまいます。

さらに真木よう子さんが演じた垣内千夏のようにバスケットボールをやりたいからCAになった、などという人が存在するんでしょうか?劇中ではっきりとそのような表現があったわけではありませんが、あの訓練のやる気のなさはそのように捉えさせるのに十分な表現でした。両立とは言ってますが、あくまでも「CA」が主で「バスケットボール」が従でなければならないと思いますが、協力しているJALがその演出を否定しなかったのは理解に苦しみます。そんな気持ちで飛行機に乗っているCAがいるという表現は、企業としてのイメージダウンでしかないと思いますが・・・

少し話が逸れました。本編のレビューに戻りますと、ストーリーと演出については極めて平凡、印象的なシーンやカット、セリフもなし。唯一興味深かったのは主演の石原さとみさんの存在感です。でもそれは彼女が持っている雰囲気がそう感じさせるのであって、やはり主人公が悩んだり、悲しんだりといった、もっと彼女の内面を描くシーンが欲しかったです。残念ながら石原さんの演技力の大部分は封印されてしまっていました。

それと、私はバスケットボールが1チーム5人だということを本作で知ったような素人ですが(^^ ;、彼女のドリブルは様になってましたね。ドリブル以外の動きはちょっと?という感じでしたが、逆に役柄のド素人の部分が見えて良かったです。そんなに急にうまくなるのもおかしいし、ドリブルの速さだけでレギュラーになったという演出は素人目には納得のいくものでした。石原さん、ドリブルだけはすごく練習したんでしょうね。本作唯一の見所です!

総合評価 ☆☆☆☆
 物語 ☆☆☆☆
 配役 ★★☆☆☆
 演出 ☆☆☆☆
 映像 ☆☆☆☆
 音楽 
☆☆☆☆

※このレビューは、私がYahoo!映画のユーザーレビューに投稿したものをより多くの人にご覧頂けるように加筆・修正して転載したものです


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櫻の園 -さくらのその- [映画レビュー]

櫻の園-さくらのその-プレミアム・エディション [DVD]

[ DVD ]
櫻の園-さくらのその-プレミアム・エディション
( 松竹 / ASIN:B001OFSH2S ) 

『櫻の園 -さくらのその-』
(2008年 松竹)
監督:中原俊 脚本:関えり香 主演:福田沙紀
          Official  / Wikipedia  / allcinema           

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(C) 2008 「櫻の園」製作委員会

私は、原作および前作を知りませんので、先入観や相対的な視点は持ち合わせていないことを最初にお断りさせていただきます。

序盤は、主人公のあまりにひねくれた言動に主人公に好感を持てずにいましたが、振り返るとそれは意図的な演出だったようです。本作では「桜の園」を上演したいという彼女のモチベーションが「自分を取り巻く環境への反感」から「自分を取り巻く環境を受け入れて積極的に関わっていこうとする気持ち」に変化していく過程がとても丹念に描かれていて、それとともに私の気持ちも主人公の成長を見守るような感覚に変化していました。

そんな主人公の成長の跡を象徴的に表現していたのが、上演が正式に決定し、お姉さんが陣中見舞いに来たシーンでした。差入れのシュークリームを勧められ、彼女が嬉しそうに「うん!」とうなずいた瞬間に我々は彼女の成長を読み取ります。それ自体は子供っぽい言動なのに、そこに彼女の成長を認めてしまうパラドックス的表現は見事だったと思います。

私は、本作の主人公の成長過程における表現は、例えば髪の毛や目の色が微妙に変化していくことで表現するようなアニメーション的な技法に近いような印象を覚えました。もちろん本編にそのような物理的な変化が認められるわけではありませんが、強いて言えば、それは彼女の「顔色」だったのかもしれません。

私は、役者さんの演技力は台詞や動きだけでは測れないと思っています。特に女優さんの場合、最も重要なのは「表情」だと思います。台詞や動きというのはそれが表現された時点ですでに監督や脚本家の意思が介在しているわけですが、表情、とりわけ目の表現というのは純粋に役者さんの気持ちの表現だと思って間違いないと思います。

個人的な評価ですが、近年の女優さんの中でこの点が最も優れているのは竹内結子さんです。また、吉永小百合さんは昔から当たり前のようにやっています。主人公を演じた福田沙紀さんはまだまだ若いし、発展途上の女優さんだと思いますが、この役を通じて表現された彼女の表情の変化に大いにポテンシャルを感じました。

そして、彼女が表現した「色」の変化は、私の大好きなラストカットに繋がっていきます。それぞれの役柄の衣装をまとった部員たちの先頭に立って本番の舞台に向かう彼女の表情は、この物語の結論としては最高のラストカットだったと思います。本作を通じて私が感じ取ったことと監督が意図したことにそれほど差がないことをこのラストカットから確認できました。

その一方で、まったくもって残念なキャスティングがありました。先生役を演じた菊川怜さんには本当に勘弁してほしかったです。「この中に他と違うものがひとつだけ混ざっています」みたいな小学生の知能テストをやらされているような違和感を最後まで払拭できませんでした。

オスカープロモーションが勘違いしてねじ込んじゃったんでしょうけど、この方、そもそも女優さんじゃないですよね。本人や事務所が言い張るのは勝手ですが、選りによってこんなに重要な役をこの方に任せちゃいけません。同じ特別出演なら米倉涼子さんの方が名実ともに相応しかったし、逆に菊川さんがチョイ役のヴァイオリンの先生という方がそれこそしっくりくるのに本当に残念です。

話は変わりますが、本作の舞台である櫻華学園の夏服はかわいかったですね。終盤にちょっとしか登場しませんが(^^ ;。

総合評価 ★★★☆☆
 物語 ★★★☆☆
 配役 ★★☆☆☆
 演出 ★★★☆☆
 映像 ★★★☆☆
 音楽 
★★★☆☆

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空へ -救いの翼 RESCUE WINGS- [映画レビュー]

空へ─救いの翼 RESCUE WINGS─ コレクターズエディション [DVD]空へ─救いの翼 RESCUE WINGS─ 通常版 [DVD]

[ DVD ]
空へ ─救いの翼 RESCUE WINGS─

( アミューズソフトエンタテインメント / ASIN:B001T9F2CM )

[ DVD ]
空へ─救いの翼 RESCUE WINGS─ コレクターズエディション
( アミューズソフトエンタテインメント / ASIN:B001T9F2CM )

 

 

『空へ -救いの翼 RESCUE WINGS-』
(2008年 角川映画)
監督:手塚昌明 脚本:内藤忠司、水上清資、手塚昌明、大森一樹 主演:高山侑子
          Official
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(C) 「空へ -救いの翼 RESCUE WINGS-」製作委員会

映画ですからドラマチックに作りこんでいくのは当然のことですが、これといって目新しいエピソードはなく、すべて我々の想像力の範囲内に納まってしまっていたのが残念でした。自衛隊という特殊な職業を描くわけですから、我々が想像もつかないエピソードで感心させてほしかったです。

本作では「パイロットは乗組員の命を預かっているんだ」というようなセリフでパイロットの責任というものを表現していましたが、それこそ我々でも容易に想像がつく話であり、自衛官でなくとも多かれ少なかれそのような責任の下に仕事をしている人はたくさんいます。極端に言えばタクシードライバーだって同様です。

私は以前、航空自衛隊のパイロット養成過程のドキュメンタリー番組を見たことがあります。そこでパイロットの責任として言及されていたのは、まず数十億円もする高価な機体を預かっていること、そしてなによりパイロット自身の養成に多大な時間と手間とお金がかかっているという事実です。自衛隊のパイロットはまず、自分自身の命に責任を持つことから始まり、その上で自分以外の命に関わるわけですから、本当にストイックな職業だと思います。そのような環境に置かれているパイロットの緊張感というのは我々の想像を絶するものです。

本作の冒頭で主人公が訓練中に頭上の障害物を見落として危険な操縦をするシーンがありました。それ自体ちょっと安易で嘘っぽいエピソードではありますが、主人公がまだまだ一人前のパイロットではないことが印象付けられ、映画の表現としては当然許されるべき範囲のものだと思います。私がこの映画が凡庸なものになると予感したのはその直後のシーンでした。基地に戻った主人公がこの初歩的なミスについて、廊下ですれ違いざまに隊長に謝ったのです。先ほど述べたような自衛隊パイロットの特殊な責任というものを理解しているのであれば、これほど軽々しい表現はありません。

自衛隊のパイロットはその養成過程でいくつもの実技試験をクリアしなければなりません。しかもそれぞれの試験は例外なく2回までしか受験できず、一度試験に落ちたらその時点でパイロットの道は絶たれるそうです。自動車の運転免許とは訳が違うのです。本作の主人公はすでにパイロットの養成課程を修了していて、実戦部隊に配属されているわけですが、そのような話を聞くにつけ、自衛隊が訓練中に犯した致命的になりかねないミスを「すいません」で済ませるような甘い組織であるはずがありません。なぜそんなミスを犯したのか徹底的に検証すべきものなのです。

中盤で主人公が要救助者を見捨てて帰投したことについて苦悩しますが、そういうのはテレビドラマ「海猿」や「RESCUE-特別高度救助隊」あるいは「救命病棟24時」などで散々やられてきたことであって、本作には自衛隊ならではの職務や責任に着目したエピソードを盛り込んでほしかったです。前述のような自衛隊のパイロットの責任の本質に少しでも触れられていれば、助けを求めている人が目の前にいても、シビアに、いたってクールに帰投することを選択した先輩パイロットの判断が極めて高度なものであることが伝わってきたと思います。

「自衛隊モノ」という視点で言えば、F-15Jのフレア投下やUH-60Jの護衛艦着艦シーンなどを見ることができてビジュアル的な満足度は高かったのですが、パイロットの描き方はちょっと軽薄すぎました。私が見たようなドキュメンタリー番組がすでに成立しているわけですから、もっと丹念な取材の元に製作に当たって欲しかったです。直感ですけど、原作のアニメーションはそこらへんはちゃんとしてそうですね。そちらは期待して拝見したいと思います。

また、本作の主人公を演じた高山侑子さんのお父様は自衛官で、本編にも登場する救難隊のメディック(救難員)だったという話は、映画以上にドラマティックな話ですね。お父様は訓練中の事故で殉職されたそうですが、彼女はお父様の追悼式出席のために上京した際にスカウトされたそうです。それでこの役に大抜擢されたわけですから、「父に導かれた気がします」というコメントには映画以上にホロっと来てしまいました。ちなみに撮影時の彼女の年齢は15歳です(^^ ;。

総合評価 ★★☆☆☆
 物語 ☆☆☆☆
 配役 ★★☆☆☆
 演出 ★★☆☆☆
 映像 ★★★☆☆
 音楽 
★★☆☆☆

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クライマーズ・ハイ [映画レビュー]

クライマーズ・ハイ [DVD]

[ DVD ]
クライマーズ・ハイ
( ソニー・ピクチャーズエンタテインメント / ASIN:B002MTS3VU )

[ DVD ]
クライマーズ・ハイ デラックス・コレクターズ・エディション
( ソニー・ピクチャーズエンタテインメント / ASIN:B001HUN20C )

[ Blu-ray ]
クライマーズ・ハイ
( ソニー・ピクチャーズエンタテインメント / ASIN:B001HUN202 )

 

『クライマーズ・ハイ』
(2008年 東映=ギャガ 145分)
監督:原田眞人 脚本:加藤正人、成島出、原田眞人 主演:堤真一
          Official 
 / Wikipedia  / Kinejun           

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(C) 2008 「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ 

私は横山秀夫の原作が大好きで何度も通読しましたが、その多彩な登場人物と次々と巻き起こるエピソードの複雑さから、映像化は至難の業だと思っていました。それにもかかわらず、2005年にNHKで放送されたテレビドラマの出来映えは実に秀逸で、原作世界をしっかり理解した上で挑めば、原作の出来に負けない映像化が可能だというお手本だと思います。

原作があるものを映像化するという作業はとても難しくて、原作どおりに作れば「映像化する意味があったのか!」と言われるし、原作をイジると「原作と違う!」という批判がどうしたって出るものです。大雑把に本作のドラマ版と映画版を類型すると、ドラマ版は原作に忠実、映画版は原作をかなり脚色したものということになります。問題はそれぞれのアプローチが成功したか否かということですが、映画版は大失敗だったと言わざるをえません。

長編小説を2時間余りの映像に集約すると、どうしてもいくつかのエピソードを省かなければなりません。映画が失敗したのはその選択でした。一例を挙げると、望月記者の事故死のエピソードを端折ったのは決定的でした。まずそれにより悠木(堤真一)がなぜ部下を持たない遊軍記者なのかがあいまいになっており、これによって悠木の人物像が希薄になり、見る人によってはただの自信過剰な記者という印象すら持ちかねません。

そして、従姉妹の望月彩子が登場しないわけですから、結末がなんとも説得力のないあっけないものになってしまっています。映画でも最後は悠木に「降りるか、降りないか」という決断を迫りますが、それが「事故原因の記事を後追いで翌日の一面に掲載するのは恥」という理由となると、原作を読んでいる人間からすると「なんでそんなことで?」と思ってしまいます。

原作を読んだことがない人は「そういうもんか・・・」と思うかもしれませんが、冷静に考えてみてください。悠木が「事故原因」を抜かなかったのは、まったくもって社内の問題であって、対外的には北関は毎日新聞以外の新聞社と同列のはずです。そして、事故原因というニュースバリューから考えて、後追いでも一面に掲載しない方がむしろ恥のような気がしますがいかがでしょうか。原作の重要なエピソードを省いてしまったおかげで、悠木の最後の決断に至る過程を、新たに無理矢理創作しなければならなかったわけです。

この映画は、エピソードの選択を誤ると、そこから派生した歪(ひずみ)のようなものがストーリー全体に及んでしまう悪い例だと思います。神沢記者(滝藤賢一)が唐突に事故死してしまうというのも、望月記者の代わりのような安易さが感じられ、これも歪のひとつだと思います。

これが事故現場の再現といえるのか?また、映画化にあたって日航機墜落事故の事故現場を再現したことが話題となりましたが、私は、このことは製作者が原作が持つ魅力を正しく理解していなかったことを象徴していると思っています。まず、そもそも未曾有の航空機事故の凄惨な事故現場を再現して映像化することは、どんなにお金をかけようとも不可能であるということは明白であり、事故現場の再現は安易な話題づくりでしかなかったように思われます。そして、前半部分において最も重要なエピソードは、佐山記者(堺雅人)の「現場雑観」だったと思いますが、新聞記者たちの奮闘を描くことがテーマである本作においては、「活字で表現された事故現場」こそがすべてであり、そこにはそもそも「ビジュアルで表現された事故現場」などは不要なはずです。

原作の活字で書かれた佐山の現場雑観を読んで落涙した人は私だけではないと思います。つまり、本作品の肝は新聞記者が書いた記事を通して読者が事故現場を想像し、「活字の力を体感すること」にあり、映画においてもこのスタンスを踏襲するべきだったと思っています。安易に事故現場を再現してしまったがために、佐山の現場雑観が持つインパクトが半減してしまったことは間違いなく、原作の最大の見せ場のひとつを映像によって潰してしまったのは皮肉なことでした。ちなみにNHKのドラマ版では当時のニュース映像を使用して、「佐山が映った」というセリフを挿入することによって佐山が事故現場に到達したことを巧みに表現しており、佐山の現場雑観が紹介されるシーンでは、女の子を抱く自衛官のイメージカットのみでその情感を表現し切っています。

『金融腐食列島[呪縛]』(1999年)や『突入せよ!あさま山荘事件』(2002年)を撮って、社会派ドラマの演出に定評のある原田眞人監督ですからとても期待していましたが、今回はハリウッド的演出手法が鼻に衝いてしまいました。ガムをクチャクチャ噛んだり、ポケットの中で小銭をジャラジャラするといったことで表現する人物設定のやり方って、向こうの映画専門学校とかで教えてそうですね。他にも「工学部出身の女性記者って!」とか「やけに小奇麗な料亭」とか「地方新聞社にしては立派な社屋とモダンなオフィス」とか、1985年という時代背景を無視した演出に細かい突っ込みを入れたくなり、最低の評価とさせていただきました。

あんまり過剰なハリウッドかぶれも、あるいは逆にハリウッドコンプレックスも考え物です。あくまでもまず「日本人が観る」ということを前提に映画作りに臨むべきだと思います。これだけ秀逸な原作の映画化で実験的手法は勘弁してほしかったです。

総合評価 ☆☆☆☆
 物語 ☆☆☆☆
 配役 ★★★☆☆
 演出 ☆☆☆☆
 映像 ☆☆☆☆
 音楽 ★★☆☆

※ 2010年1月21日、一部を加筆・修正いたしました。
※ このレビューは、私がYahoo!映画のユーザーレビューに投稿したものをより多くの人にご覧頂けるように加筆・修正して転載したものです。

 


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