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天国からのエール [映画レビュー]

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(C)2011 「天国からのエール」製作委員会

『 天国からのエール 』
(2011年 アスミック・エース 114分)
監督:熊澤誓人 脚本:尾崎将也、うえのきみこ 出演:阿部寛、ミムラ、桜庭ななみ
          Official Wikipedia / kinejun.jp           
 

作り手が故人の意(遺)志と偉(遺)業に真摯に向き合ったことがしっかりと伝わってくる良作でした。
これは同じ実話を基にした物語でも、『余命一ヶ月の花嫁』(2009年 東宝)が決定的に欠いていた要素です。
私は、本作が故人の成したことを借りて表現したものとは、我々、大人へのメッセージだと解釈しています。
そのメッセージとは、鈴木先生風に言えば、「大人たるものすべからく教育者たるべし」ということで、
我々は日本の古き良き時代には当たり前のように存在した美徳と概念を取り戻さなければならないと思います。

 「昔はいろんな人が助けてくれた。今の若者にはそれがない。そういうのをほっときたくないんだよ」

そのようなテーマ表現にあっては、
主演の阿部寛さん、ミムラさん、桜庭ななみちゃんという主要キャストのお芝居は本当に素晴らしかった。
しかし、演出という観点で言えば、
残念ながら目に見えてテーマ表現に貢献したと思える演出は皆無だったと言ってしまわなければなりません。
とにかく本作は俳優さんのお芝居で牽引したストーリーであり、作品だったというのが私の印象です。

本作を観たいと思った理由のひとつは、新人監督の作品である点でした。
私がアスミック・エース製作の映画を観る時のひとつの楽しみとしているのが、新しい才能に触れられるという部分で、
私が今現在注目している映画監督のお名前を知る機会を与えてくれたのは、ほとんどがアスミック・エース製作の映画です。

新しい才能という視点で作品に臨む時には、
初めて手がけた長編映画という割引やエクスキューズを考慮しなければならないのかもしれませんが、
私の経験上、ポテンシャルを秘めた監督というものは、デビュー作であろうとなんだろうと才能の片鱗を見せてくれるのもです。
しかし、本作にはレビューで取り上げたいと思わせるシーンがひとつもありませんでした。
技術的なことで言えばこの方は逆位置のショットに切り返すカットの使い方(編集)がことごとく下手くそなんですね。
細かいことを言うようですが、テンポを悪くしているものが多かったし、あまり意味がないものが多かった。
こういう基本的技術の使い方は映画監督のセンスや力量を図る上でひとつの指標となるものだと思います。

もうひとつ言わせてもらうと、まったく「絵作り」ができていない。
このことは映画監督の決定的な資質とでも言うべきもので、
「絵」に力を与えることができない映画監督の存在価値は薄くならざるをえません。
具体的に言うと、「沖縄」を感じさせてくれる絵がまったくなかった。
もちろん海、砂浜、太陽、台風・・・などが断片的に映像に映っていたのかもしれません。
しかし、それらがテーマ表現と結びついて観客の印象に残らなければ意味がありません。

私は「沖縄の風土」というものは、主人公の人間性やその生き方、ポリシーが形成される過程にあっては
大変重要な要素だったと感じていて、主人公をはじめとして、そこに生きる人々が持つ優しさや大らかさといったものに
説得力を付与するような「沖縄らしい絵」をもっともっと盛り込んで欲しかったと思っています。
申し訳ありませんが、私にはこの監督がそういう視点で丁寧に時間をかけてロケハンをしたとは思えませんでした。
また、私が個人的に日本映画のひとつの役割だと考えている、撮影に協力していただいた地域の振興という意味でも
本部町という土地の魅力が映像に刻まれていたとは言いがたいものでした。

最後にもう一点だけ。
本作のラストは主人公の生前の写真からモデルとなった仲宗根陽さんの写真へのオーバーラップでまとめとしていて、
これはこれでひとつの演出としては成立しているとは思います。
しかし、私としてはこの「現実へのフィードバック」という部分をもっとうまくやって欲しかったなという思いがあります。

この映画の主題歌は、舞台となった「あじさい音楽村」出身のステレオポニーというバンドによるものなのですが、
もしかしたらそうなのかもしれないとは思ったもののも、そのことをちゃんと知ったのは家に帰ってからでした。
そして、これ以上、説得力のあるまとめ方はないということに感心したのですが、
同時に、なんで本編を観たときにはっきりと気づかせてくれなかったんだろうとすごく残念な気持ちになりました。

主人公が成したこととは、音楽スタジオを作ったことというよりも、「人」を作ったことだと思うのです。
そのことを象徴し、仲宗根陽さんが生きた証となるのがメジャーデビューしたバンドの存在なのです。
このことは仲宗根陽さんの遺影を写すだけでは表現しきれない部分でしょう。
これは私のアイデアですが、本編のラストは現実に沖縄で開催されている音楽フェスティバルの映像を挿入することによって
現実へのフィードバックとし、そこから主題歌が導入したら、誰の目にもこの曲を歌っているバンドこそが
主人公の遺業であるということが伝わるし、観客はエンドロールを観ながら大いに感動し、その深い余韻に浸ったことでしょう。
「演出」とはそういうことなのではないでしょうか。
私は観客にこう感じて欲しいという「監督の意思」にもっともっと触れてみたかったのです。

総合評価 ★★★☆☆
 物語 ★★★★
 配役 ★★★★☆
 演出 ★★☆☆☆
 映像 ★★☆☆☆
 音楽 ★★★☆☆


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