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君に届け (上) [映画レビュー]

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(C)2010 映画「君に届け」製作委員会 
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『 君に届け 』
(2010年 東宝 124分)
監督:熊澤尚人 脚本:根津理香、熊澤尚人 主演:多部未華子、三浦春馬
          Official Wikipedia / Kinejun          

(P)君に届け 

原作の1話分、アニメの1話分を拝見しただけの私が言うのもなんですが、本作は、原作の世界観を損なうことなく、それでいて実写ならではのアイデアをもって、2時間という映画の枠に巧みに収めきった秀作だと思います。私は原作の第1話は、それ単体でもとても完成度が高いと思っていて、主人公二人の心情の微妙な揺れ動きから感情の核心までがきっちりと盛り込まれていて、そのことをアニメの第1話を見て強く確信するに至りました。この作品の特徴は、主人公二人の感情というものが客観的にはきわめて簡単明瞭なところで、二人は最初からほとんど両想いなわけです。そして、その想いのすれ違いが「君に届け」というタイトルに込められていると考えられます。

したがって、本作を鑑賞するにあたってのひとつの見所は、そのような完成度の高い序盤をどのように映像化するのかにありました。しかし、本作のオープニングは、必死の形相で疾走する勝村政信さんから始まるというもので、およそ原作とは似ても似つかぬシーンがいきなり登場して、冒頭から軽い肩透かしを食らってしまいました。しかし、観終わってみると、このオープニングは本作の結末に向けては重要な伏線となっているし、勝村政信さんが演じる主人公の父・黒沼喜多夫という存在も、主人公・黒沼爽子(多部未華子)のキャラクターに説得力を付与する役割を果たしていて、物語全体に奥行きを出してくれています。爽子が父親の愛情を一身に受けて育ったことが、冒頭のみならず、物語の随所で描写されているし、父親の職業がオーケストラにおいてもっとも地味なシンバル奏者であることからも、爽子が父親のDNAを確実に受け継いでいることが伝わってきます。

この脚本が巧みな点は、「大人の視点」を随所に盛り込んでいるところで、少女漫画におけるティーンの恋愛や友情という美化されがちな要素に、より現実的な感覚を付与することによって、漫画をそのまま実写化したときに生起したであろうアンバランス感が見事に払拭されています。ここでいう「大人」とは、爽子たちのクラス担任・荒井一市(ARATA)と爽子の父親の黒沼喜多夫の存在であり、この二人は一見頼りなさそうでも、主人公をはじめ、登場する高校生たちに重要な道標を提示していきます。

本作における荒井先生(ピン)の強烈な存在感が、本作のコメディ的要素を際立たせているのは間違いありませんが、何より彼が主人公たちを見守っているという、ストーリー上のアンカー(重石)として存在している点がとても重要だと思います。主人公たちを茶化して回るその姿は、実は生徒たちを常に目の端に置いているということを表現していて、爽子と3秒間目を合わせる行(くだり)も、爽子がクラスで浮いていることを心配してのことだったのではないかと想像するのも面白いところです。矢野あやね(夏菜)が爽子との関係が壊れかけていることを「ピンのせいだ」と言ったときに、「自分で乗り越えるしかないんだ」と説諭し、「例えそれがオレでもな!ハッーハッー!」と茶化すシーンは、この物語における荒井先生の役割を象徴的に表現しています。この役柄の強烈な存在感は、そのまま演じたARATAさんの存在感だったとも言えると思います。この役はそのキャリアの中でも特異なものだったと思いますが、きわめて個性の強い役柄を見事に演じ切っており、改めて非凡な俳優さんだと感じ入りました。

また、脚本的には物語の結末に向けて、「桜の花びら」と「生徒手帳」が重要なキーアイテムとなっているところも見逃せません。爽子が風早と初めて出会ったときに手にした桜の花びらを後生大事に持っているというのも、爽子らしさをうまく表現しているし、桜の花びらが挟まれた生徒手帳を風早が手にした時点で、ほとんど爽子の想いは風早翔太(三浦春馬)に届いているという描き方もとても高度なものだったと思います。それでも爽子は自分の想いを自分の言葉で必死に伝えようとするところに大きな意味があるし、その姿を目の前にした風早が「ゆっくりでいいよ」と爽子を気遣うところに、我々は「想いが届く瞬間」の美しさを見るわけです。風早に生徒手帳を手渡して、その背中を押したのが荒井先生だったところは、この物語おいてとても重要なことだったと思います。

本作が映画として高いクオリティを有している理由のひとつは、この物語をある部分では主人公・黒沼爽子の成長物語と位置づけている点であり、爽子が自身の風早に対する気持ちの本質が如何なるものなのかということを認識していく過程を丁寧に描いた作品ということもできると思います。原作では罰ゲームのくだりで爽子は風早に対してほとんど告白してしまっているわけですが、映画では、爽子は「風早君は私をかばってくれただけです」と釈明するに止まり、この時点で本作は原作との分岐を果たします。原作では爽子は風早に対する気持ちが特別であることに早々に気づいていて、そのことを未体験の喜びとして受け止めるわけですが、映画における爽子は風早に対する気持ちが「特別」であることを、胡桃沢梅(桐谷美玲)に指摘されて初めて気がつくような有様で、それが恋愛感情であることを認識するのはさらに先となっており、本作は爽子の自己認識の過程を段階を踏んで描いていった作品とも言えるでしょう。

最後に爽子の背中を押すのが父親であるという点もストーリー上はとても重要な意味を持っていて、そして実はそれ自体がとても自然なことなのであり、父親からの自立をもって、爽子の成長の最終段階を表現していたのだと思います。

「大切な人に会いたいのなら・・・全部放り出して会いに行かないとな」

生まれたばかりの爽子に会うために演奏を放り出して走り出した父親と同じように、爽子も風早に会うためにその場から走り出します。言うまでもなく、ここにオープニングの伏線が見事に結実しています。

明日、本作の演出面および、多部未華子ちゃんのお芝居に言及して総合評価を記載したいと思います。

(つづく)

関連記事 : 君に届け (下) (2010-10-11)
(P)君に届け (2010-09-25)


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non_0101

こんにちは。
本当に原作ファンでも納得の作品になっていましたね。
主演の二人の頑張りが光っていたと思います。
そして、監督さんの演出も…凄いです☆
by non_0101 (2010-10-12 00:12) 

ジャニスカ

non_0101 さん、nice!とコメントありがとうございます!

これだけ著名な原作があると、
原作のファンからは否定的な意見が出るのは常でしたけど、
おおむね好意的に受け止められているようですね。

主演の二人は本当にはまっていましたね。
それと脇の若手俳優の面々もとても魅力的でした(^^)
by ジャニスカ (2010-10-13 18:09) 

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