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天使の恋 [映画レビュー]

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天使の恋
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『天使の恋』
(2009年 ギャガ 119分)
監督・脚本:寒竹ゆり 出演:佐々木希、谷原章介
          Official Wikipedia / Kinejun          

2010060601.jpg
(C) 2009 「天使の恋」製作委員会 

本作は、佐々木希ちゃん目当てのお客さんは大喜びでしょうけど、「映画ファン」にとってはあらゆる意味で受け入れられない作品ということになるでしょう。正直申し上げて、お芝居の経験がない方を主役に抜擢するというのは、劇場にわざわざ足を運ぶ「映画ファン」を冒涜する行為とまで言わせてもらいます。お金を頂戴した上で「見てもらう」以上、作品に携わるスタッフとキャストにはプロフェッショナルとしての仕事が要求されるというのは至極当たり前の論理ですから、お金を払うに値しない技術しか持たない人のお芝居がスクリーン上にあるという事実については、それを「映画ファンへの冒涜」としてしまうのも言い過ぎではないはずです。女優さん(ではないのか?はっきりしないところがなお罪)のことを悪く言うのはこのブログの本意ではありませんが、「あめんぼあかいなあいうえお」も満足に言えないような中学校の演劇部以下のお芝居を見せられてしまっては、口も悪くならざるを得ません。

私は、冒頭からおよそ20分間も続く「学芸会」レベルのお芝居にも閉口してしまいましたが、それにもまして大学生が作った自主制作映画のような監督の自己満足に過ぎない「どうだ」と言わんばかりの「絵作り」や押し付けがましい劇中音楽と「音編」に、早くも「あくび」を禁じえませんでした。明らかに不要なカットが散見され、私はそれを初監督作品特有の「切れない症候群」と診断しました。

それでも谷原章介さん演じる大学講師が本格的に登場してからは、なんとか背後に迫った睡魔の手から逃げることができました。それというのも本作の主人公二人の関係が、長澤雅彦監督の『卒業』(2003年 東宝)を彷彿とさせたからです。そこに存在していたのは「あの映画もう一度見たいなぁ・・・」という想いであって、本作の内容については上の空だったわけですが、主人公二人が互いに取り違えた写真を交換するシーンで「雨と傘」が重要な役割を果たしているのを見て、本作の作り手が『卒業』を意識しているのは間違いないと確信してしまいました。もっともこのシーンの演出だけを取り出せば、映像になんの工夫も情緒もなくて、長澤監督の『卒業』には足元にも及びませんでしたが、一応は本作が何をやりたいのかを理解しました。

本作のストーリー構成は、主人公の高校生・小澤理央(佐々木希)を中心にして「友情パート」と「恋愛パート」にきれいに分かれています。そして、特徴的なのが両者がほとんど相関しないところで、終盤にかけては主人公が大学講師の小澤光輝との恋愛関係の中で友人関係のあり方を見直すというような描写はあるものの、逆に言えばそのような漠然とした関連性しか見出すことができません。そして、両パートそれぞれにおける主人公が、ほとんど別人格のように見えるところも、あたかも一つの映画の中で二つの物語が進行しているように感じさせています。

すでに「恋愛パート」が長澤雅彦監督の『卒業』を意識したものである可能性を指摘しましたが、果たして「友情パート」についてもどこかで観たような状況や台詞が認められます。序盤、主人公が友人とともにクラブを訪れるシーンが登場すると、私は直感的に北川景子ちゃん主演の『Dear Friends』(2007年 東映)を思い出しました。それでもこの時点では雰囲気の類似ぐらいにしか捉えていませんでしたが、物語が進むに連れて「友情パート」についても完全に『Dear Friends』を意識している可能性があることに気がついてしまいました。本作の主人公が考える友達の選択基準は、自分にとって利用価値があるかどうかにありましたが、小澤光輝との恋愛を通してその価値観が変化し、真の友情の意味に気がつくというのが「友情パート」のプロットとなります。『Dear Friends』には「恋愛」という要素は希薄でしたが、友情についての価値観の変化を描いている点はまったく同じと言えるでしょう。

少し話は逸れますが、そのような友情の描写の中に、ちょっと意図不明なシーンが存在していて、とても気になってしまったので言及しておきます。終盤、主人公と最も結びつきが強かった柴田奈緒子(加賀美早紀)が自殺してしまいます。しかし、冷静に振り返ってみると、彼女が自殺に至る過程は理解できても、彼女が自殺することにストーリー上どんな意味があるのかが全然理解できません。この時点ですでに主人公の価値観は完全に転換しているわけだし、このことは主人公に「悲しみ」以外の何をもたらしたというのでしょうか。主人公が霊安室で涙を流すシーンにて、さっぱりこの自殺の件は終わっており、ストーリー上は「無目的」の自殺であったと言わざるを得ません。近年の映画製作者は、どうしても人の命を奪わずにはいられないようです。

さて、「友情パート」についてはテーマが「友情」という抽象的なものだけあって、一概に他作品の影響を断定することはできませんが、監督が「岩井組」出身ということなので、少なくとも「恋愛パート」に長澤監督の『卒業』へのオマージュが含まれていることは間違いないと思います。しかし、他作品の影響については「オマージュ」とか「意識している」というような作品の雰囲気的なものであれば問題ないとは思いますが、ストーリーの根幹となるエピソードやアイデアを「真似」するのはちょっといただけません。

映画が好きな方ならばお気づきかと思いますが、本作の結末およびラストシーンには、『明日の記憶』(2006年 東宝)の結末との奇妙な類似が存在しています。脳腫瘍の手術を受けた小澤光輝は記憶に障害を残したまま退院しますが、主人公のことも記憶から完全に抹消されています。退院の日に病院を訪れた主人公はその事実を悲しみを持って受け入れ、ここから二人が初めて出会ったときと同じ状況が繰り返されるというのが本作のラストシーンということになります。記憶は失っても人格は変わらないから、結局同じ人を好きになる、というところに感動を生まれるわけですが、すでに存在する著名な作品とそっくり同じエピソードを見せられてしまっては、私は感動どころか「ドン引き」するしかありません。

冒頭で「映画ファン」には受け入れられない作品だと申し上げたもうひとつの理由はここにあります。「盗用」という言葉を安易に使用したくはありませんが、私は思わず権利関係を心配してしまいました。そんな話題は微塵も聞いたことがなかったので、問題はなかったんだと思いますが、幸か不幸か作品そのものが低レベルすぎて、あの作品と比較すること自体がナンセンスだということを誰もが認識しているのかもしれません。

 恋愛パート『卒業』(2003年 東宝 長澤雅彦監督)
 友情パートDear Friends』(2007年 東映 両沢和幸監督)
 結末『明日の記憶』(2006年 東映 堤幸彦監督)

これが本作の概観ということになります。製作者はよくもこんな恥ずかしい作品を発表できたものです。当たり前ですが、本作を見れば映画3本分が楽しめるということにはなりませんし、映画を愛する方には、上記3本は是非ご覧いただきたい作品です。しかし、言うまでもなく本作は「映画ファン」には到底オススメできる作品ではありません。ただし、佐々木希ちゃんが初めてのお芝居に対して彼女なりに奮闘したことは理解できるし、上記3作品をご存じない方には寝耳に水の話ということになるわけですから、作品そのものを否定するつもりはありません。

総合評価 ☆☆☆☆(否定したも同然の評価ですけど・・・^^;)
 物語 ☆☆☆☆(これは複数の作品のパクリだ、と言われても仕方がない内容である)
 配役 ☆☆☆☆
 演出 ☆☆☆☆☆(監督の仕事とはそういうことではない。勉強しなおし!)

 映像 ☆☆☆☆
 音楽 ☆☆☆☆


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コメント 4

Sho

私も佐々木希の演技に関しては、「果たしてお金をとっていいものだろうか?」と思いました。それのこと、本人や監督にはきちんと自覚していただきたいです。
ラストの「記憶を失って、またかつて愛した人との恋愛が始まる」いう流れは、確かに「明日の記憶」と同じですね。演技のレベルの差はすさまじいですが。佐々木希はこのラストシーンが、クランクアップだったようです。
あの時点でのマックスの演技力が、あのラストだったと思います。
>近年の映画製作者は、どうしても人の命を奪わずにはいられないようです
同感です。
大事な人が亡くなるということは、胸が張り裂けるほど悲しいことですから
作中で人を死なせば涙が取れるのは、ある種当然ですね。
でも「人が一人亡くなる」ということの重み、「亡くなっていく人の尊厳」が
あまりに無視されているように感じます。
唯一谷原章介だけがよかったです。
by Sho (2010-06-05 23:12) 

ジャニスカ

Shoさん、nice!&コメントありがとうございます!

私はこのレビューを書くに当たって、細部の確認のために何度か見直さなければなりませんでしたが、
こんなに画面を見ていられない映画は初めてでした、、、

佐々木希ちゃんのお芝居を絶対評価すれば、プロの仕事からは程遠いものではありますが、
彼女はある意味、被害者であって、私はすべての責任は監督にあると考えています。
ド素人を主役に抜擢することが「映画ファンに対する冒涜」とだすれば、
それをやってしまった製作者には映画に対する真摯な「志」が欠けていると言わざるをえないでしょう。
(Shoさんが使用されていた「志」という言葉はこの場合もっともしっくりとくるものです)
「九智」と「富良田」の件には、一夜明けて「怒り」すら覚えております。
そのことを知ってしまうとこの映画の大部分が軽い「ノリ」で作られていると考えざるをえません。

そんな「ノリ」で人の命を奪ったのだとすれば、なおのこと悪質ですよね。
私は、映画における「人の死」をすべて否定するつもりはありませんが、
それぞれの作品において「人の死」がどんな意味を持つのかを精査していく姿勢は忘れたくないものです。
その姿勢というものは、まずは製作者が保持していなければならないもののはずですが、
少なくともこの監督には決定的に欠如している資質ということになるでしょう。
ストーリー上、あるいはテーマ表現上なんの意味も成さない「人の死」は本当に不毛です。

長くなりました、、、レビューの続きのようになってしまって、スイマセン、、、(^^;
本文でも触れていますが、長澤雅彦監督の『卒業』を是非ご覧ください!
この映画に対するフラストレーションが晴れることは間違いありません!
私も近いうちにレンタルして再度鑑賞するつもりでいます。
私にとってはあの作品の良さを思い出させてくれたことが、この映画のせめてもの存在価値です。

また、遊びに来てください!お待ちしてます(^^)。
by ジャニスカ (2010-06-06 09:31) 

ciel-bleu-fonce

コメントおそくなってすみません。「薔薇のない花屋」いよいよ佳境です。まとめてみていたら疲れてしまいました。

「月の恋人」私も観ていますよ。中だるみせず面白い展開になるといいですね。

またブログに寄ってくださいね。
by ciel-bleu-fonce (2010-06-07 18:31) 

ジャニスカ

ciel-bleu-fonce さん、nice!&コメントありがとうございます!

「薔薇のない花屋」は私もレコーダーに溜まってしまっています(^^;。
集中してドラマをまとめて観るのは大好きなんですけどね、時間があれば・・・

「月の恋人」はあんまり集中して観る必要がないので、楽ですけど、、、(^^;

また、寄らせていただきます。。。
by ジャニスカ (2010-06-07 21:17) 

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