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アマルフィ 女神の報酬 [映画レビュー]

『アマルフィ 女神の報酬』
(2009年 東宝 125分)
監督:西谷弘 脚本:真保裕一、西谷弘 主演:織田裕二
          Official / Wikipedia / Kinejun          

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(C) 2009 フジテレビジョン/東宝/電通/ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エヌ・ピー/FNS27社

本作は、フジテレビ開局50周年記念作品としてフジテレビドラマ班が総力を結集して製作した娯楽大作映画ということになります。本作の最大の特徴であるキャスティングありきの製作手法は、1990年代に活躍したフジテレビのドラマプロデューサー・大多亮氏(現・執行役員デジタルコンテンツ局長)がタレントと人気のある旬の俳優さんのスケジュールを確保するために生み出したものですが、それは視聴率が取れる良質の作品を作るためには当時最良の「手段」だったと言えるし、事実、視聴者の圧倒的な支持を受けた作品も数多くありました。

参考:大多亮氏が手がけた主なテレビドラマ  
  作品放送年主な出演者最高視聴率 
  『東京ラブストーリー』
『101回目のプロポーズ』
『愛という名のもとに』
『ひとつ屋根の下』
『素晴らしきかな人生』
『この世の果て』
『妹よ』
『僕らに愛を!』
『いつかまた逢える』
『プライド』
『ラストクリスマス』
1991年
1991年
1992年
1993年
1993年
1994年
1994年
1995年
1995年
2004年
2004年
織田裕二、鈴木保奈美、江口洋介
浅野温子、江口洋介
唐沢寿明、鈴木保奈美、江口洋介
江口洋介、福山雅治
織田裕二、浅野温子、佐藤浩市
鈴木保奈美、桜井幸子
唐沢寿明
江口洋介
福山雅治、桜井幸子、大塚寧々
佐藤浩市
織田裕二
、桜井幸子
32.3%
36.7%
32.6%
37.8%
25.0%
25.3%
30.7%
22.4%
22.9%
28.8%
25.3%
 
※ 主な出演者は、出演者のうち、特に関係の深い俳優さん。太字は本作出演者。
※ 他に大多氏がプロデュースした映画『ヒーローインタビュー』(鈴木保奈美主演)、『バースデイプレゼント』(和久井映美主演)なども
キャスティングありきで企画された。

大多亮氏が「企画」としてクレジットされている本作は、キャスティングに加えてロケーションありきで企画されるという、いわば大多亮氏あるいは亀山千広氏の「昔取った杵柄」で製作された映画ということができると思います。しかし、「フジテレビ開局50周年記念作品」という肩書きからもわかるように、「織田裕二主演で映画を作る」という企画そのものが半ば目的となってしまい、「おもしろい映画を作りたい」という製作者の熱意が伝わって来なかったのは残念でした。

本作が単発企画であることを承知で申し上げれば、『踊る大捜査線』シリーズの青島とまでは行かなくとも、続編を期待させるぐらいの魅力的な主人公を創作するような気概を見せて欲しかったです。主人公である外交官の黒田康作(織田裕二)は、ハリウッド映画で言うところの「ジャック・ライアン」のようなポジションのキャラクターであり、映画の主人公の職業設定としては申し分ないものでしたが、「仕事が出来過ぎる冷静沈着な男」という彼の人物設定に感情移入するのは困難であり、織田裕二さんのファンでない限り、もう一度見たいと思わせる魅力を欠いていたように思います。

2010010803.jpg織田裕二さんの本作におけるお芝居は、おそらく「娯楽大作映画の主人公」を意識したもので、終始力が入りっぱなしであり、キャラクターそのものに遊びがないことも手伝って、主人公の人間的魅力が表現されることはありませんでした。たとえば、黒田というキャラクター独特の口癖だったり、あるいは気の利いたジョークのひとつでも随所に盛り込むべきでした。その他の登場人物もほとんどが薄っぺらなキャラクターであり、私がそのキャラクターに辛うじて魅力を感じたのは、戸田恵梨香ちゃん演じる研修生の安達香苗ぐらいのものでした。

また、織田裕二さんの「力が入ったお芝居」と書きましたが、ハリウッド的な豪快なヒーロー像という表現では、一定の評価を与えてもいいものと思います。しかし、織田さんがイタリアという舞台に負けないお芝居を披露しているにもかかわらず、外国人俳優がやたらとこじんまりとしたお芝居をしていたことに私は違和感を感じてしまいました。外国が舞台で、外国人の登場人物が多いという意味では、シーンによっては洋画を観るような感覚があるかと思いましたが、日本人的な感覚を外国人にも当てはめてしまっており、ハリウッド的で豪快な織田さんのお芝居と、日本的でこじんまりとした外国人のお芝居という逆転の対比ができてしまっていたのは皮肉なことでした。

具体的に言えば、本作に登場する外国人は、稲川素子事務所(クレジットはなかったが)所属の俳優を髣髴とさせ、ある程度日本人の感性を理解しているような俳優さんたちだったような印象を覚えました。つまり、製作者は、イタリアという舞台の臨場感を表現できる外国人俳優よりも、より扱いやすい外国人俳優をキャスティングすることを選択したという想像ができます。メイキングで拝見しましたが、地元警察官を演じたロッコ・パパレオさんのアドリブ演技をことごとく否定していたのが象徴的です。製作者は、イタリアでのロケーションを過信し、それ以外の部分でのイタリアについての表現の工夫を怠ってしまったようです。

ストーリーについても、スケール感の尻つぼみは否めないところだと思います。その印象を決定付けたのは、事件の首謀者・藤井昌樹(佐藤浩市)の動機が明らかになったときです。亡き妻への愛とその仇討ちというのは、犯人への同情の余地を残すような、いかにも日本人的発想といったものであり、その動機はやはりこじんまりとしたものに収まってしまっています。ストーリーにそれなりのスケール感を表現するのであれば、犯人の動機はテロによる国家転覆とかあるいは壮大なイデオロギーの主張といったものでなければなりません。

そのような動機だけに、藤井という男は江上紗江子(天海祐希)との関係からもわかるように所詮は普通の優男であり、これだけの事件を起こした犯人のキャラクターとしてはまさに「役不足」だったと言えます。そして、藤井のそのような人物設定が仇となったのか、クライマックスシーンでは犯人たちが銃の発砲をためらうそぶりを見せ、挙句の果てに犯人同士で銃を向け合うという、犯罪者の狡猾さとはかけ離れた描写が連続していきます。私は、サラ・ブライトマンのコンサートシーンが始まると、本作の結末には漠然とケヴィン・コスナー主演の『ボディガード』のクライマックスシーンのようなアクションと臨場感のある演出を期待してしまいましたが、黒田の説得で決着というのはあまりにも拍子抜けです。

2010010802.jpgまた、本作のタイトルともなっているアマルフィでのロケーションは、世界遺産ということもあって本作の目玉ともいうべきものでしたが、アマルフィという街が登場する必然性が今ひとつ感じられませんでした。藤井がアマルフィという街の創生の伝説に触れて自分が凡人であることを語りますが、冷静に考えると「時間稼ぎ」というのは大した問題ではなく、ストーリー上はそれだけのためにアマルフィが登場したことになっています。しかも、数分間登場するアマルフィ市街地でのシーンは、登場するのが黒田と紗江子とイタリア人二人のみという、これまたこじんまりとした小規模編成であり、まったく緊迫感を表現できていなかったのは世界遺産でのロケには様々な制約があったことを想像させます。

本作最大のセールスポイントであったはずのイタリアロケは、やはりそれ自体が半ば目的になってしまっていたように思われます。本作は、ストーリー的にも演出的にもイタリアという舞台を生かしきれなかった「虚仮威し(こけおどし=実質はないのに見かけだけは立派に見えるもの)」の映画だったと言わざるを得ません。

総合評価 ★★☆☆☆
 物語 ☆☆☆☆
 配役 ★★★★
 演出 ☆☆☆☆(『容疑者Xの献身』を撮った人とは思えない・・・)
 映像 ★★★☆☆
 音楽 ★★★☆☆


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