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ハルフウェイ [映画レビュー]

ハルフウェイ [DVD]

[ DVD ]
ハルフウェイ
( ポニーキャニオン / ASIN:B002C2BBIO )

『ハルフウェイ』
(2009年 シネカノン 85分)
監督・脚本:北川悦吏子 出演:北乃きい、岡田将生
          Official / Wikipedia / Kinejun          

2009112001.jpg
(C) 2009 「ハルフウェイ」製作委員会

北川悦吏子さんといえば、フジテレビのドラマ『素顔のままで』『あすなろ白書』『ロングバケーション』など、90年代に高視聴率ドラマの脚本を立て続けに担当し、数々の印象的なセリフとシチュエーションを生み出したヒットメーカーですが、意外なことに映画の脚本を書いたのは本作が初めてです。ましてや初監督作品ということになるわけですが、私は、本作の存在を知ったとき、「北川悦吏子監督」というところに一抹の不安を抱きながらも、久々に北川さんの脚本を映画という形で観られることに大きな期待感を抱きました。

『ロングバーケーション』に代表されるように北川作品のタイトルは、独特のセンスが光る「造語」に特徴があり、それが物語の根底に直感的あるいは観念的に作用しているところが、作品の質を高めています。『ハルフウェイ』というタイトルにも、その響きに何かを予感させる魅力があり、私は、大いに期待してしまったのです。そして、このレビューでは北川脚本の特徴と魅力を過去のドラマ作品も引用して分析を試みるつもりでしたが、残念ながら、本作では過去の作品で観られた「北川節」も「北川シチュエーション」も完全に封印されており、断念することにしました。

選りによって初監督作品で、脚本でも新しい試みにチャレンジするとはいい度胸をしています。本作を一言で表現すれば、「内容がナイよう」であり(^^;、言ってみれば右にも左にも曲がれない狭くて暗いトンネルの中を85分間も歩かされているような感覚でした。その細くて長~い薄っぺらな内容を紹介すると、「彼氏とずっと一緒にいたいから、東京の大学を受験しないで欲しいんだけど、彼氏の希望も尊重してあげたいから、やっぱり応援することにした」という話であり、これ以上でもこれ以下でもないことは本作をご覧になられた方には同意していただけるはずです。

これが北川悦吏子脚本でなければ、「そういう駄作があったんだ」で済むところですが、実力のあるベテラン脚本家のことですから、そこに何らかの意図を読み取る必要があります。ひとつ考えられるのが、いくつもの伏線を張って巧妙に物語を作りこみ、時には奇抜な面白さを追求しなければならないテレビドラマの手法を離れて、純粋に「空気感」だけで勝負できる映画的な脚本を書きたかったのかもしれません。もうひとつは単純に脚本家よりも映画監督をやりたかったということもあったかもしれません。仮にその両方の心理が働いていたとしたら、その目的は本作において十分に達成されたと言えますが、その結果面白い作品に仕上がったかといえば、残念ながら前述のとおりです。

北川悦吏子監督の本作における映画監督としての側面に言及すると、「何にも勉強せずに撮り始めちゃったんだろうなぁ・・・」という感想であり、想像ですが、岩井俊二氏に「とりあえず撮っちゃえばいいんだよ、編集で何とでもなるんだから。なんならオレ編集手伝うし」という「助言」(?)があったかもしれません(^^;。

そのことがうかがえるのが、本作全体にわたって使用されている「同ポジで切る」編集であり、セリフの流れが必ずしも絶たれているわけではないので、いわゆる「コマ落とし」のように繋がっています。それが最初から企図したものなのか、編集の段階で方針転換してつまんだのかは判別しかねるところですが、ちゃんとした「カット割」をしていないことは確かなような気がします。わかりやすく言えば、シーン全体に渡ってカメラを回し続け、セリフをしゃべる役者さんにカメラを向けていくというきわめて稚拙な撮影手法を使用しており、その映像に編集によって後付けで意味を付与したような印象です。

私は、そのような演出に対して「違和感」しか感じ取れませんでしたが、編集で強引な意味づけをするくらいなら、最初からちゃんとカット割をして撮ればいいのにと思ってしまいました。ましてや自分が脚本を書いているのであって、脚本家が監督をやることの最大のメリットは、書きながら映像を想像できる点だと思いますが、「言葉を創造する力」と「映像を想像する力」は必ずしも一致しなかったようです。

また、先にも述べたように監督の意図が、青春時代の「空気感」を表現することにあったとすれば、それは成功したかもしれません。しかし、致命的だったのは、その「空気感」があまりにもありふれたものであり、映画が描くドラマとしては面白味に欠けてしまっていました。本作で描いているのは、よく言えば、誰もが経験した青春時代の恋愛ですが、悪く言えば、どこにでも転がっている「きわめてパーソナルな恋愛の思い出」でしかなかったような気がします。

そして、主人公のふたりが映画の主人公としてはあまりにも魅力に欠けており、登場人物に感情移入できないというのは映画としては致命的な欠陥でした。特にヒロ(北乃きい)の「わがままさ」というのは、本作のストーリー上の肝とも言うべき性格であり、そのことを表現するシーンが随所に盛り込まれていますが、それは彼氏じゃないとカワイイとは思えない種類のものであって、友達が彼女といちゃついているのをそばで見ていなければならない不愉快さのようなものを最後まで払拭できませんでした。

物語的にも、監督が伏線を張ることを嫌った結果かもしれませんが、突然降って沸いてくるようなストーリー展開にはおいてきぼり感しか感じられませんでした。中でも平林先生(大沢たかお)は、ヒロの考え方を180度変える重要な存在でしたが、序盤にワンカットだけ「身切れた」ように登場するのみであり、大沢たかおさんじゃなかったら、その存在を見逃してしまうような初出の扱われ方でした。この役柄の重要度を鑑みれば、少なくともその存在を印象づける「顔寄り」のカットが一発欲しいところです。また、終盤に突如としてヒロのお母さんが登場しますが、一緒にお弁当を作っていたので、当然シュウのために作っているものと思いましたが、結局お弁当を渡すシーンは描かれず、なんだかよくわからない唐突なシーンは我々を混乱させただけでした。

本作に惹かれた理由には、本ブログでも何度か取り上げた北乃きいちゃんの主演作ということもありました。本作においても、どこにでもいそうな高校生の女の子の「普通っぽさ」を見事に表現していたとは思いますが、そのことをもって本作が彼女の代表作のひとつになるかといえば、否であり、俳優さんというものは演じるのが薄っぺらな役柄だと、そのお芝居に対する評価も変わってきてしまうものなんだと思います。魅力的な役柄を魅力的に演じて初めて魅力的な女優さんと言えるのであり、北乃きいちゃんの代表作は、本作を見た後でも、『幸福な食卓』(2007年 松竹)であることに変わりはありませんでした。

総合評価 ☆☆☆☆
 物語 ☆☆☆☆
 配役 ☆☆☆
 演出 ☆☆☆☆
 映像 ☆☆☆☆
 音楽 ☆☆☆

関連記事 : 素直になれなくて(2010-04-22)


参考:北川悦吏子さんが脚本を手がけた作品
 『世にも奇妙な物語』(フジテレビ) ※「ズンドコベロンチョ」(1991年)ほか、10作品。
 『素顔のままで』(1992年 フジテレビ)
 『その時、ハートは盗まれた』(1992年 フジテレビ)
 『チャンス!』(1993年 フジテレビ)
 『あすなろ白書』(1993年 フジテレビ)
 『君といた夏』(1994年 フジテレビ)
 『愛していると言ってくれ』(1995年 TBS)
 『ロングバケーション』(1996年 フジテレビ) ※平均視聴率29.6%、最高視聴率36.7%(関東地区)
 『最後の恋』(1997年 TBS)
 『Over Time オーバー・タイム』(1999年 フジテレビ)
 『ビューティフルライフ』(2000年 TBS) ※平均視聴率32.7%、最高視聴率41.3%(関東地区)
 『Love Story』(2001年 TBS)
 『空から降る一億の星』(2002年 フジテレビ)
 『オレンジデイズ』(2004年 TBS)
 『たったひとつの恋』(2006年 日本テレビ)


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コメント 2

double

北川さんの作品は過去からずーっと女心をくすぐるものがありました。
気持ちを良くあらわしてくれてる、ってカンジ。
それはやっぱりドラマだから良い部分だったのかもしれないですね((+_+))

『次はどうなるんだろ』っていう展開が、映画では短かったのかもしれないですね。

ブログがとても整頓されていて、綺麗ですね。
参考にさせてください!!
by double (2009-12-17 20:48) 

ジャニスカ

doubleさん、nice!&コメントありがとうございます!

もう一度、新しい作品で「北川ワールド」にハマってみたいですネ。
もう連ドラは書かないんでしょうか、、、

ブログ褒めてもらってホント嬉しいです。ヽ(=´▽`=)ノ
文字が多くて申し訳ないんですけど、「いい文章」を書きたいと思ってます。
doubleさんみたいなエッセイ風の文章も素敵ですね。
自分には書けないので憧れちゃいます(〃⌒ー⌒〃)ゞ。

もっと画像なんかを増やして文章にも興味を持ってもらえるようにしていきますので、
また遊びに来てください!('-'*)ヨロシク♪
by ジャニスカ (2009-12-17 23:44) 

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