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『バッテリー』
(2007年 東宝 118分)
監督:滝田洋二郎 脚本:森下直 出演:林遣都、山田健太
          Official / Wikipedia / allcinema          

2009101501.jpg
(C) 2007 「バッテリー」製作委員会 

本作を見て改めて感じたことですが、滝田洋二郎監督作品の演出上の最大の特徴は、「最初の5分間の瞬発力」にあるような気がしています。『おくりびと』(2008年 松竹)でも触れましたが、アバンタイトルにその映画の方向性を決める重要な要素を何気なく盛り込むことによって、見る者を物語の中に一気に引き込むのが滝田作品と言えるかもしれません。

例えば、『おくりびと』においては、アバンに「笑い」の要素を盛り込んで、エピソードが持つ湿っぽさを払拭し、物語全体を通しての「死」の演出方法を提示しました。また、『壬生義士伝』(2005年 松竹)においては、アバンに大掛かりな長回しのカットを採用し、殺陣の迫力を表現するとともに、主人公を取り巻く主要な登場人物を網羅するという「大技」に挑戦し、観客を作品世界に引き込むことに成功しています。

本作の冒頭は、家族で引越し先に向かうシーンから始まりますが、車内の4人家族の何気ない会話の中に主人公たる原田巧(林遣都)の家族内での立場がにじみ出ており、巧の台詞はひとつもないにもかかわらず、その人物像がなんとなく理解できてしまいます。観客は主人公の人となりに興味を持ち、これ以降主人公の行動の背景を読み取ることに注意を向けます。それはすなわち巧が野球をやる動機であり、そのことは終盤に向けて物語の重要な要素となっていきます。

この最初の5分間は、物語の帰結点を暗示しているとも言え、それによってその後のひとつひとつのシーンが持つ意味が明確となり、作品全体の完成度を高めることに貢献しているのです。

私は、『おくりびと』のレビューで滝田演出の特徴を「わかりやすさ」と表現しましたが、そのカット数の多さはテレビドラマにも匹敵するかもしれません。ただし、滝田監督のカット割は長回しのカットをベースにしており、その点はきわめて映画的なものと言えます。

もっとも単純なシーンは、被写体を1カットで撮ることですが、そこに被写体を別の角度から撮ったカットを繋いでいくことで、複雑化し、映像に様々な意味を付与していくのがカット割です。滝田演出のわかりやすさは、常に引きの絵から始まるカット割にあるような気がします。一般的には顔寄りから始まるシーンというのもよくあるものですが、被写体が置かれている場所を明示するカットが最初にあると、観客はそのシーンが持つ意味をすんなり理解することができます。

そして、その最初のカットはそのシーンを貫く長回しで成立しており、そこに顔寄りなどのカットを挿入することで、台詞や表情の印象付けていくのが滝田流の基本的なカット割ということができると思います。

また、本作を見ていて驚いたのは、映画にしては複雑なカット割にもかかわらず、すべてのカットが完璧に繋がっているということです。テレビドラマを見ていると、カットまたぎで役者さんの動きが繋がっていないことがよくあります。同じ演技が2度できない役者さんの技量もさることながら、ドラマの場合、それ以前に過剰に切り過ぎたカット割に問題があるようにも思われます。とはいえ、「カットを繋げる作業」というのは撮影においても編集においても、存外難しい作業であるということは間違いありません。

本作におけるカットの繋がりのなめらかさには、監督のこだわりが明確に存在していると思われます。繋がりを意識したら、動きがないポイントで切るほうが簡単に繋がりますが、本作ではあえて役者さんのはっきりとした動きがあるポイントで切るという高度なテクニックを用いています。かなりのリテイクをしていることが想像できますが、動きで繋がるカットというのは見ていて気持ちがいいし、「つまづき」がないので観客はそのシーンに集中し、引き込まれていくのです。

そして、本作を語る上で無視できないのが「野球」という要素だと思いますが、少年野球の雰囲気がしっかりと表現されていました。私も野球少年だったので、思わずほくそえんでしまうような懐かしい描写が散りばめられていました。特に印象に残っているのが仲たがいした巧と豪(山田健太)が和解するシーンに登場する「ボールの早回し」です。

「早回し」というのはボールを相手の胸元にしっかり投げないと、流れが止まってしまうので、それなりの技量と連携を必要としますが、それが長く続いたときの爽快な連帯感には、野球の醍醐味とも言える気持ちよさがあります。このシーンで二人はほとんど言葉を交わしませんが、きれいな「早回し」を登場させることによって、野球を通じて気持ちが通じあったことが見事に表現されています。

それと、巧の投球フォームの美しさも本作の野球表現に説得力をもたらしていると思います。決して教科書どおりのフォームとも言えませんが、頭の後ろから出てくる腕がしっかりと振り下ろされており、速い球を投げるフォームとしては至極納得のいくものとなっています。林遣都君のデビュー作ということで、その演技はかなり荒削りなものでしたが、野球を通じて表現された存在感は主演としての役割を十分に果たしたものだったと思います。

総合評価 ★★★★
 物語 ★★★★
 配役 ★★★
 演出 ★★★★
 映像 ★★★★
 音楽 ★★★★


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