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感染列島 [映画レビュー]

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『感染列島』
(2009年 東宝 138分)
脚本・監督:瀬々敬久 出演:妻夫木聡、檀れい
          Official / Wikipedia / allcinema          

2009101701.jpg
(C) 2009 映画「感染列島」製作委員会

日本の映画界には、大きい予算で制作されるハリウッド志向の大作映画を撮れる監督もプロデューサーもまだ育ってません。大きな予算と多くのスタッフを動かすというのは、相当な経験とノウハウを要するはずであり、その点ではあらゆる制作過程がシステマチックに確立されているハリウッドに一朝一夕で対抗できるわけがありません。

まずこれだけ複雑で専門的な要素を持つ作品の脚本をひとりで書いているという事実に驚いてしまいました。ましてや監督が脚本を書いているといういわばワンマン作品となっているわけですが、本作のような予算をかけた大作映画でそんな芸当を成し遂げることができる監督といえば、邦画史上、黒澤明監督しか思い浮かびません。そもそも本作がハリウッドを意識しているのかは不明ですが、少なくともハリウッド映画に倣って、徹底した役割分担の元に製作されるべき作品だったことは確かなような気がします。

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本編全体を通じて言えることですが、本来ウソであるフィクションをウソっぽく見せないという、映画における最も基本的な作業にことごとく失敗しているように感じました。致命的だったのは、最も重要な要素である感染症がどんな性質のものなのかが明確に設定されていない点だと思います。

悲惨な死に方をする人もいれば、完全に治癒する人もいるし、症状が出てすぐに死ぬ人もいれば、数日後に死ぬ人もいる、などなど、それぞれのエピソードに都合よく合わせた病状には「ウソっぽさ」を感じずにはいられません。最終的に1000万人以上の死者を出した感染症なのに完全に治癒した人が少なからずいて、しかも未だいかなる感染症なのかが判明していないのに退院させてしまうというのも、ラストの血清による治療のエピソードへの「都合のいい」布石だったとしか思えません。未知の感染症なんだからなんでもありという製作者の都合のいい解釈が見え見えでした。

また、現実世界において「新型インフルエンザ」がもたらす世界への影響と各国政府の対応を目の当たりにしてしまったということを差し引いても、本作における日本政府の対応の杜撰(ずさん)さにはまったくリアリティがありませんでした。最前線の病院を描くことに主眼を置いていたとは言え、序盤に厚生労働省の役人が申し訳程度に登場するのみという「国の対応」の描き方は、中途半端だったとしか思えません。例えばですが、総理大臣の記者会見のシーンが一発あるだけで、その深刻度と国の総力を挙げての対応が十分に伝わってきたと思います。これでは感染症の拡大が不可抗力によるものだったというよりも、「人災」だったと捉えることもできてしまいます。

物語の展開も実に散漫でした。たとえば、藤竜也さん演じる大学教授が、中盤に突如として自分がガンに冒されていることを告白した上で「ウィルスと人間の共存」という自論を持ち出し、さもそれがこの感染症治療の重要な鍵になるように思わせます。しかし、それ以降その話は膨らまず、教授はウィルスの発生源を突き止めて命を落とします。おそらくその死因は感染症なんだと思いますが、持病のガンで死んだことも否定できない中途半端な描き方であり、どちらにしても「ウィルスと人間の共存」は不可能であるということの証左を身をもって示したことになり(ガンはそもそもウィルスではないが)、まったくもって「あれ」はなんだったのかと思ってしまいます。

そして、極めつけは主人公二人によるとってつけたようなロマンスの安っぽさです。序盤二人が恋人同士だった過去が明らかになりますが、それ以上の描写はないので、二人の恋愛に感情移入する術がありません。にもかかわらず、唐突に「あなた変わらないのね」から「あなた変わったわね」に気持ちが変化し、終盤いつの間にか二人の「より」が戻っても、我々は他人の恋愛を冷めた目で見るしかありません。

ラストで今さらながら、そんな二人の馴れ初めが描かれますが、「そんな話聞いてないよぉ!」みたいな新事実を立て続けに提示して、強引な帰結に持っていくというのは、稚拙な脚本と言われても仕方がないように思われます。難しいかもしれませんが、二人の過去のエピソードについては、序盤にうまく挿入することができていれば、もっと二人に感情移入できていたはずです。

また終盤、栄子(檀れい)がどういうわけか長野に異動することになるわけですが、要は「リンゴの木」のエピソードに結び付けたいという安易な発想と場所選びが手に取るようにわかってしまうところも稚拙でした。


冬季のリンゴの木(長野県) 参考:国内のりんご生産量(平成18年)
  第1位 青森県 441,500t (53.1%)
  第2位 長野県 177,700t (21.4%)
  第3位 岩手県  57,700t (6.9%)
  第4位 山形県  51,100t (6.1%)
  第5位 秋田県  33,800t (4.1%)

以下、とある会議室にて。

「リンゴの木が普通にある場所ってどこですかね?」
「そりゃ、青森でしょ」
「青森は遠すぎるだろ。東京から車で行ける範囲じゃないと」
「そうそう、最後は車がガス欠して、ブッキーを走らせるんだから」
「長野はどうです?りんごの生産量全国二位ですよ」
「距離的にもちょうどいいねぇ。よし決まり!」

そして、実(み)はもちろん葉っぱすらない冬木立を遠目から見て、それがリンゴの木であることを見分けてしまう松岡(妻夫木聡)の、医師でありながら博物学にも精通した秀才ぶりにも驚かされました。そんな彼は、感染症が収束して一段落すると、何を思ったのか北海道で「ほのぼの地方医」になります。なんで?あまりにも唐突過ぎて、ここでも「そんな話聞いてないよぉ!」と言いたくなってしまいます。

粗探しをすればキリがない作品ですが、あえて見所を挙げるとすれば、檀れいさんの美しさでしょうか。特にラストに若い頃の役として登場する檀れいさんのチャーミングなことといったら、本当にうっとりしてしまいました。しかし、その流れで、あんなにキレイな人が「背もたれのないイスで居眠りできる特異体質」だった、などという事実が判明しては、まったく興ざめです。結局粗探し(^^; 。

総合評価 ☆☆☆☆
 物語 ☆☆☆☆
 配役 ☆☆
 演出 ☆☆☆☆
 映像 ☆☆☆
 音楽 ★★☆☆☆


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コメント 2

kawamasa

映画の分析がするどいです。荒が多いからつっこみ易いのかもしれませんが。。観た人友人のコメントが良かったし、題材も期を得ていているので期待していただけに残念でしたね。
by kawamasa (2009-10-18 11:44) 

ジャニスカ

立ち寄っていただいてありがとうございました。
邦画にはこういう種類の作品を作る能力はまだないようです。
ハリウッドによるリメイクに期待しましょう。
比較したらもっと面白いレビューが書けそうです。。。
by ジャニスカ (2009-10-19 17:53) 

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