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ドロップ [映画レビュー]

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『ドロップ』
(2009年 角川映画 122分)
原作・脚本・監督:品川ヒロシ 出演:成宮寛貴、水嶋ヒロ
          Official / Wikipedia / allcinema          

本作の意図するところは「青春映画」なんだと思いますが、私が感じた率直な印象を申し上げれば、「暴力映画」でした。同じようなスタイルの映画として思い浮かぶのは、井筒和幸監督の『岸和田少年愚連隊』(1996年 松竹=松竹富士)や『パッチギ!』(2005年 シネカノン)ですが、それらの暴力シーンには当然それなりの意味づけがあり、暴力を否定せずとも、彼らなりの正義のようなものが明確に描かれていたような気がします。目を背けたくなるようなシーンでも、それがあればこそ成立できるのです。

しかし、本作の場合、冒頭のケンカのシーンで、いきなり「ケンカするのに理由は要らない」という台詞が登場し、暴力シーンの意味づけをいとも簡単に放棄してしまいます。この台詞は終盤にもう一度登場しますが、これは結局「不良」と呼ばれる人たちは、「純粋」に自己満足のために暴力を使用していることを認めているとも取れる台詞です。これでは、本作が暴力をカッコよく描くことを主眼に置いた「暴力映画」であると捉えられても仕方がないと思います。

そして、特筆すべきは、本作中に「暴力を止める存在」がまったく描かれていないという事実です。序盤、その存在は、冒頭の暴力シーンから一転して鮮烈に登場するみゆき(本仮屋ユイカ)が当然演じるものと思っていましたが、結局彼女は最後までフワフワした存在でしかなく、暴力を肯定も否定もしません。主人公の家族も暴力については何にも言わないし、哀川翔さん演じる刑事もどういうわけか暴力を黙認します。この一方の価値観が突っ走っていくという展開は、「不良の暴力」と同様に製作者の極めて自己中心的な態度の表れのような気がします。

また、「人は簡単に死なない」という台詞が劇中何度も登場しますが、暴力シーンの文脈で登場すると、なんとなくゾッとしてしまいました。平成に入ってから頻発した少年によるリンチ殺人事件を衝撃的に受け止めた世代としては、そのような方便の元に奪われた命があったかもしれないと想像してしまい、背筋が凍る思いがしてしまいました。

本作で描かれているのは、まさに「あの事件」が起きた時代だと思いますが、それが本作で描かれる暴力の延長線上にあったかもしれないと考えると、認めたくないことですが、妙にリアリティがあります。私の世代と大して差がない人たちが作っているはずなのに、そのあたりに思いが至らないというのは、育った環境が違うからでしょうか。冷静に見てみると、PG-12では済まない映画のような気もしてきます。

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作品の根本を否定しておきながら、あえて演出面にも触れておきます。品川ヒロシ監督初の長編作品ということで、正直なところかなり「眉唾」で臨みましたが、冒頭のアバンタイトルがあまりにも短くて、まったく意味を成していなかったので、案の定、先が思いやられてしまいました。もうワンシーン先の「こうして俺はドロップアウトした」という台詞の後でタイトルインした方が効果的だったと思います。

しかし、その後は思いのほかセオリーどおりのカット割りとカメラワークが続いて驚いてしまいました。初めて映像を撮るというと、カメラを動かしたくなるのが人情だと思いますが、ズームにしてもパンにしてもジワーッとした動き方を多用していて、とても見やすいものでした。

もっとも印象に残っているシーンは、木村(上地雄輔)が主人公の姉(中越典子)にプロポーズするシーンです。玄関先に並んで座る二人を前後からの2カットで捉えて、それを切り替えしていく演出なんて、一朝一夕でできるものじゃありません。品川監督の「映画好き」に偽りなく、相当な数の映画を見ていることが窺えました。

ひとつ苦言を呈するとすれば、宣伝のために出たテレビ番組で、あのカットはこういう効果を狙いましたなどということは言わない方がいいと思います。聞かれたから答えたんでしょうけど、映画監督の「このシーンはこう感じてください」などという発言ほどナンセンスなものはありません。一度映画が公開されたら、どのように感じるかは観客の自由意志に委ねられなければなりません。ちなみにそのシーンは、言うほど面白味のあるシーンだったとは思いませんでした。

また、主人公を取り巻く連中のキャラクターもとてもうまく表現されていたと思いますが、水嶋ヒロ君演じる井口達也だけは、今ひとつキャラクターが定まっていない気がしました。「ビビってんじゃねぇぞ!」という役柄の口癖が最後まで空回りしていた印象です。その風貌とは裏腹に、いかなる人物かがはっきりと伝わってこないというのは、演出よりも役者さんが持つ雰囲気によるところが大きいような気がします。水嶋ヒロ君が個性俳優ではないことがはっきりした作品と言えるかもしれません。

総合評価 ★★☆☆☆
 物語 ☆☆☆
 配役 ★★☆☆
 演出 ★★★☆☆
 映像 ★★☆☆☆
 音楽 ★★☆☆☆


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