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ラフ ROUGH [映画レビュー]

ラフ スタンダード・エディション [DVD]

ラフ スペシャル・エディション [DVD][ DVD ]
ラフ スタンダード・エディション
( 東宝 / ASIN:B000LXSSJG )

 

『ラフ ROUGH』
(2006年 東宝)
監督:大谷健太郎 脚本:金子ありさ 出演:長澤まさみ、速水もこみち
          Official / Wikipedia / allcinema          

2009092301.jpg
(C) 2006 「ラフ」製作委員会 

あだち充作品の映像化にあたって、最も期待するのは「二人の微妙な距離感」と独特の「笑い」の表現だと思いますが、実写で表現するのはやはり至難の業のようです。

あだち作品に一貫しているテーマのひとつは、表面上の反発とは裏腹に、実は心の深淵に共有する価値観があって、互いを常に意識しているという「二人の微妙な距離感」だと思います。しかし、本作においては対立する和菓子屋のエピソードからの二人の距離の縮まり方が早すぎて、肝心の「微妙な距離」という状況が描かれることはありませんでした。

そしてその対立する構図の触りとしての「人殺し」という台詞にはなんとも言えないシュールな笑いがあるところですが、漫画の表現のようにはいきませんでした。あだち作品の笑いはいわゆる「・・・」で表現されるような「空気」で笑わせる種類のもので、そこは監督の腕が試される部分でしたが、その雰囲気を映像で表現するのは難しいようです。というか、大谷健太郎監督にはムリだったということでしょうか。

細やかな気配りや、繊細な神経がないと映画監督なんて務まらないと思いますが、大谷監督というのは、映像の細部へのこだわりがない人なんでしょうか。それは映画監督としては致命的な欠陥です。そのことは『NANA』(2005年)でも感じたことですが、観客の目が細部の粗探しに向き始めたらその映画はもう終わりです。

例えばですが、仲西(阿部力)が交通事故に遭遇するシーンで、急いでいることを表現するために運転しながら腕時計見る動きがありますが、普通走行中に腕時計を見ることなんてないと思うんです。正面パネル上の時計を見る方が手っ取り早いし、百歩譲って腕時計を見たとしてもハンドルを握っている腕を覗き込むような動きをするのが人間だと思います。

また、そのシーンで言えば、助手席からの同ポジのショット1発で繋いでるところも、工夫をしようという気概が感じられず、こだわりが皆無のシーンでした。カットで言えば4カットもあったわけで、それだけあれば役者の動きに頼らなくても急いでいることを表現する方法はいくらでもあったと思います。この人、楽して映画を撮りたいんでしょうか。腕時計を見る動きに「こだわる」のなら、信号待ちのカットを入れてそこに盛り込めば、まだ自然な流れになったと思います。

他にも、演者に歩幅を気にしながら歩かせるなんて演出はどう考えてもおかしいし、エキストラの動きにも不自然さが目立ち、そんなのにOKを出してしまう神経が信じられません。また、古屋先生と咲山先生の結婚写真が子供だましの合成写真だったのも監督のこだわりのなさを象徴しています。そりゃあれだけの人数をスチール写真のためだけに集めるのは大変でしょうけど、監督が「撮ります」と言えばできないことなんてないのです。

細かいことを言うようですけど、映画監督ならば、1秒のカットでもそれが本編の一部である以上、批評の対象になることを覚悟しなければならず、逆にそういう緊張感なくしていい映画が撮れるわけがありません。

その一方で、本作演出上のもうひとつの肝である「水」の表現の美しさは褒めなければなりません。VFXを使用した表現もありましたが、競泳シーンのほとんどはクレーンカメラと水中カメラを駆使したもので、編集の上手さも手伝ってそのスピート感の表現は見事なものでした。水中から見たスイマーとその周囲に発生する気泡がとても美しく撮れていて、その普段あまり目にしたことのない映像には新鮮さを感じました。こんなにきれいな映像を撮れる人なのに、先ほども触れたそれ以外のシーンでの細部への意識の低さはまったく理解に苦しむところです。

また、本作の出演者は総じて、役者としてのレベルが高いとはお世辞にも言えませんが、その中でも主人公の友人役を演じた石田卓也君だけは独特の存在感がありました。最近では『救命病棟24時』の研修医役などでテレビでも売り出し中の彼ですが、個人的には未だに『蝉しぐれ』(2005年)での繊細な少年役が忘れられません。『夜のピクニック』(2006年)でも誰にも言えない悩みを抱えたナイーブな高校生を好演してたし、今後の活躍が期待される俳優さんのひとりです。もっとコミカルな役などにも挑戦して演技の幅を拡げていってほしいですね。

それと余談ですけど、ライバル関係にあるスイマーを演じた速水もこみち君と安部力君は、二人とも『絶対彼氏。』のサイボーグですよね。本作はそれ以前の作品ですが、今となってはそういう目で見てしまう部分もあります(^^ ;。また、『お金がない!』の森廉君がすっかり大人になっていることにも驚きました。

それにしても、スキマスイッチの『奏(かなで)』は名曲!!

総合評価 ☆☆☆☆
 物語 ☆☆☆☆
 配役 ☆☆☆☆
 演出 ☆☆☆☆
 映像 ★★☆☆☆
 音楽 
★★☆☆☆


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