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おくりびと (上) [映画レビュー]

おくりびと [DVD]

[ DVD ]
おくりびと
( アミューズソフトエンタテインメント / ASIN:B001Q2HNOW )

『おくりびと』
(2008年 松竹)
監督:滝田洋二郎 脚本:小山薫堂 音楽:久石譲 出演:本木雅弘、広末涼子、余貴美子、山﨑努
          Official / Wikipedia / allcinema           

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(C) 2008 映画「おくりびと」製作委員会

言わずと知れた日本映画史上最高傑作の登場です。いよいよ来週の月曜日にテレビで放送されるということなので、今日から3回に分けてレビューを書かせいただくことにしました。本日は本作についての総論的レビューを、明日以降は主として脚本と演出について感じたことを書きたいと思っております。明日以降は「ネタばれ」もありますので、まだご覧になっていない方は、観た後にもう一度アクセスしていただきますようお願いします。

私は、本作をアカデミー賞外国語映画賞受賞の直後に丸の内ピカデリーで観ることができました。正直なところアカデミー賞を獲らなかったら劇場で見ることはなかったと思います。そして、この日本映画史に燦然と輝く作品を劇場で観なかったことを一生後悔したことでしょう。アカデミー賞にノミネートされて改めて注目度が高まりましたが、私は受賞することはないと思い込んでいました。それだけに受賞のニュース速報が出たときには興奮して思わず声が出てしまったものです。

余談ですが、アカデミー賞授賞式の当日、「みのもんたの朝ズバッ!」が生中継でレッドカーペットを歩く本木雅弘さんを待ち構えていたんですけど、放送時間内に間に合いませんでした。散々煽ったみのさんが「モッくんの喜びの声をお伝えしたかったんですが、本当に申し訳ありません」と言って番組が終わったら、「はなまるマーケット」が始まって、ヤッくんが登場するというコントのような奇跡が起きて大笑いしたものです。その瞬間、全国でツッコミが入ったと思うんですけど、いつもどおり淡々と番組を進めていく薬丸さんがまた可笑しかったりしました(^^)。

アカデミー賞受賞以前からモントリオール映画祭グランプリをはじめ海外で高い評価を得て話題になっていましたが、テーマが「人の死」を扱っているということで、漠然と倦厭する気持ちがありました。そのあたりの心情は本作の主人公と奥さんが納棺という仕事に対して最初に示した反応に似ているところがあって、「人の死」を「穢れ(けがれ)」と捉える文化的背景があることは否定できず、少なからず日本人一般に存在する感覚だと思います。

そんな気持ちの私が本作を劇場で観たいと思ったのは、アカデミー賞外国語部門賞を受賞したことで、外国人が高い評価をした本邦の作品を日本人として観ておきたいという気持ちもありましたが、私自身が「人の死」に直面していたことが大きかったと思います。実は本作を観るおよそ2週間前に祖母が亡くなり、納棺師の方には本当におばあちゃんをきれいな姿にしていただきまして、その存在を目の当たりにしたのでした。

お通夜で寝ず番をしたんですけど、祖母の祭壇と向き合っていたら、ふとこの「儀式」の意味に思い当たりました。すべては死者のための儀式に見えていたけど、それと同時におくりだす人間がその人の死を現実のものとして受け入れるための儀式でもあるのです。その意味で納棺師の方は、死者を通じて我々にその現実を受け止める準備を促すような重要な役割を果たしているのだと思います。

本作においては、杉本哲太さん演じる銭湯の一人息子が納棺師という仕事を蔑視する言動が描かれていますが、自分の母親の死に直面して初めて「人の死」を当事者として受け止めることになります。彼は、本木さん演じる納棺師の「儀式」を目の当たりにすることによって、その現実を受け入れ、徐々に感極まってくるのです。よく考えてみると、「人の死」というものは常に身近に横たわっているはずのものなのに、我々は無意識にそのことから眼をそらしています。 職業差別もそのことと同様にぼやけたあいまいな根拠に基づいているに過ぎません。

本作の重要なテーマのひとつは、我々に「人の死」をもっと身近なものに感じさせるための「追体験」の場を提供することにあったと思います。劇中に登場する人々の「概念上の人の死」に対するリアクションは、至極当たり前のものであると同時に、「現実の人の死」に対するリアクションもまたリアルなものです。しかし、私たちが知らなかったのは「おくりびと」という存在のおかげで「人の死」を受け止める準備が整っていくという事実です。我々は普段から「人の死」から目をそむけずに、それに直面したときの準備をしておくことが必要だと感じました。それは納棺師の仕事を正しく理解することから始まるべきものです。

3月に映画館で観たときはアカデミー賞受賞の直後とあって、並んだ上に1回飛ばしたぐらいに満員でした。平日の昼間だったので、年齢層が高く女性の方が多いという客層でしたが、印象的だったのは、エンドロールに入っても誰ひとりとして席を立つ人がいなかったことです。私はエンドロールに入った瞬間に思わず拍手をしたい衝動に駆られてしまったのですが、少なくともあの劇場にいた人たちも私と同じような気持ちだったと思います。一緒に観た相方にそのことを話したら、本当にそんな雰囲気だったと同意してくれたので、私が思い切って手を叩いていたら、劇場全体に伝播(でんぱ)していたんじゃないかと思って、未だに後悔しています。

そのことからもわかるように、本作は観るものに強烈な印象を残す、未だかつてない力強さを持った作品です。その場に立ち尽くしてそれぞれの想いを巡らせて見なければ気がすまないのです。実は本作が描いていたものは、誰もが自分の身に置き換えて考えなければならないほどの普遍的なテーマだったという証明だと思います。本作を映画館で観た方で、私と似たような経験をした方はいるでしょうか。他の劇場がどんな反応をしていたのかずっと気になっていたことです。

初回から長文になってしまいました(^^ ;。いつかこの映画についての私の想いを書きたいと思っていたので、テレビ放送で改めて注目度が高まっているこの機会にと思い立った次第です。明日は脚本について感じたことを書こうと思っていますので、ぜひともお付き合いください。

(つづく)

以下、ラテ欄より抜粋 :

月曜ゴールデン JNN50周年記念 アカデミー賞受賞作品
映画 『 おくりびと 』

9月21日(月・祝) 21 : 00 - 23 : 34 TBS系列
(本編130分 ノーカット放送)

日本初!アカデミー賞外国語映画賞ほか89冠に輝く映画「おくりびと」が地上波ノーカット初登場!
国内560万人動員!世界65カ国公開!日本映画の金字塔!!

 


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