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あしたの私のつくり方 [映画レビュー]

あしたの私のつくり方 [DVD]

[ DVD ]
あしたの私のつくり方
( 日活 / ASIN:B000UTDR3I )

『あしたの私のつくり方』
(2007年 日活)
監督:市川準 脚本:細谷まどか 主演:成海璃子

          Official / Wikipedia / allcinema          

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(C) 2007 「あしたの私のつくり方」製作委員会

本作は、物語性をできるだけ排除して、徹底して少女の内面にスポットライトを当てた作品です。周囲の環境に合わせて「演じている自分」ではなくて、本当の自分を探す二人の少女が携帯メールを通してそれぞれの悩みや想いを共有していきます。でもいつしかメールをやり取りする中で発現する自分たちも結局は作られたものであることに気づいてしまいます。

本作は、「少女の心」という複雑で繊細で可視性のないものを描くとあって、演出にはそれ相応のアイデアや工夫と技術が必要だったと思います。本作が成功する鍵は、少女の閉鎖的な内面をいかに表現するか、そして「外の世界」との交わりを可能な限り排除することにあったような気がします。

まず気がつくのは主人公によるナレーションを主体に進む物語です。もうこの時点で本作が、主人公を中心にして外向きに何かドラマが巻き起こっていくものではなく、あくまでも主人公の内向きの心理描写がメインになっていることがわかります。さらにそのナレーションのベースとして、風景などの「捨てカット」を多用することによって、主人公と関係する「外の世界」を排除して、主人公の内面を浮き彫りにしていきます。

そして、本編においてもっとも特徴的な演出が、映画では珍しいワイプを切った画面作りです。離れた場所にいる二人の気持ちがクロスオーバーしていく様を同時に表現するにはこの方法しかなかったと思います。一歩間違うと安っぽい映像になるところですが、画面の構図や重なりなどが綿密に計算されたものであり、二人だけが共有する世界を見事に表現しています。また、二人のメールの内容を伝える文字表現もサイズやフォントにまでセンスが感じられ、森田芳光監督の『(ハル)』(1996年 東宝)を思い出した方も少なくないのではないでしょうか。

しかし、いかに表面上の演出が優れていても、それを表現する女優さんがその力を欠いていたら、なんにもなりません。主人公を演じた成海璃子ちゃんは本役にピッタリの女優さんだったと思います。彼女が卓越しているのは「ひとり芝居」の巧(うま)さだと思います。うまく言えないですけど、どんな種類のシーンでもひとりで完結できる力強さがそのお芝居にあると言えばいいでしょうか。それは本作がまさに要求する部分であり、彼女の実力が遺憾なく発揮されたと言っていいでしょう。

終盤、主人公の寿梨(成海璃子)が日南子(前田敦子)のために創作した物語が、文芸部の先生(高岡蒼甫)から思いもよらず高い評価を受けてしまうことで、物語が動き出します。寿梨はそのせいで校内イベントの代表挨拶を務めることになり、「作り物の自分」がいつの間にか周囲から高い評価を受けていることに戸惑います。もう一方で、寿梨が創作した物語のおかげで学校で人気者になり、彼氏ができた日南子も同じように「作られた自分」に戸惑いますが、それを承知で関わってきてくれる周囲の存在に気づき、それも「自分」であるということを受け入れます。

寿梨は、そんな日南子からの思いがけない電話で素直な感謝の気持ちを伝えられ、彼女の閉鎖的な内面が一気に解放されます。自分が代表を務める晴れ舞台のイベントに父、母、兄、母の再婚相手を呼び、自分は壇上に立って衆目の中、堂々と挨拶の言葉を述べるのでした。それまで「内向き」だった気持ちが一転して外に放出される瞬間です。同時に「外の世界」を排除して徹底的に内面を描写してきたそれまでの演出がこのラストに生かされてくるのです。

市川準監督は、残念ながら昨年急逝されましたが、CMディレクター出身という珍しい経歴の持ち主で、本作でもそれが生かされた独特の絵作りが際立っていました。画面の構図のセンスなどは短い時間と少ないカットで表現されるCMならではの演出で研ぎ澄まされたものではないかと思います。


参考:市川準監督の主な作品
 『BU・SU』
(1987年 富田靖子主演) ※デビュー作
 『つぐみ』(1990年 牧瀬里穂主演)
 『大阪物語』(1999年 池脇千鶴主演)
 『東京マリーゴールド』(2001年 田中麗奈主演)
 『竜馬の妻とその夫と愛人』(2002年 木梨憲武主演)
 『トニー滝谷』(2004年 イッセー尾形主演)
 『buy a suit スーツを買う』(2008年) ※プライベートフィルム(遺作)
CMディレクターとしての代表作には、「禁煙パイポ」「金鳥タンスにゴン」「エバラ焼肉のたれ」などがある。

また、高岡蒼甫君が年相応の役を演じているのを本作で初めて拝見しました。見た目が落ち着いた雰囲気でカッコいいし、テンション高い演技ばかり見てきたせいか、抑えた演技の方が断然しっくりきました。何でいまだに高校生の役をやらされているんでしょうね。『パッチギ!』(2005年 シネカノン)の印象が強すぎるんでしょうか、今の彼を正当に評価した相応しい役柄をもっと見てみたいものです。

総合評価 
 物語 ★★★
 配役 ★★★☆☆
 演出 
★★★★ 
 映像 ★★★★
 音楽 
★★★☆☆


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