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そのときは彼によろしく [映画レビュー]

『そのときは彼によろしく』
(2007年 東宝)
監督:平川雄一朗 脚本:いずみ吉紘、石井薫 出演:長澤まさみ、山田孝之、塚本高史
          Official / Wikipedia / allcinema           

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(C) 「そのときは彼によろしく」製作委員会 

きれいな映像を撮ることは映画監督にとって至上命題のひとつですが、映像を「撮る」ことと「作る」ことは区別して考えなければなりません。

映画がテレビドラマと決定的に違うのは記録媒体がフィルムだということです。フィルムは、テレビが使っているビテオテープと比べて記録できる情報量が格段に大きく、簡単に言えば詳細で美麗な映像の記録と再生が可能です。テレビドラマの監督が映画に進出しだして久しいですが、テレビ畑の監督にとって映画を撮ることはひとつのステータスという意味合いがあることは否定できないと思います。そして、映像作家としては、フィルムを使用する映画ならテレビよりもきれいな映像が撮れることに大きな魅力を感じるはずです。

本作の監督である平川雄一朗は、テレビ番組制作会社・オフィスクレッシェンド所属のテレビディレクターであり、本作が初監督作品となります。そういう目で見るからかどうかわかりませんが、本作の全体的な印象を申し上げれば、「よそ行きの映画」です。見た目の美しさに力を入れすぎて、何かを伝えようとする意思が感じられない映画でした。そのことは、その映像のほとんどが、「撮った絵」ではなくて、「作られた絵」であることに原因があるように思います。フジテレビの中江功監督の『シュガー&スパイス 風味絶佳』(2006年 東宝)でも同じようなことを感じたのを思い出しました。

「作られた絵」とは、わかりやすく言えば合成やCGなどの技術を使用した映像ということになりますが、本作の場合、ロケーション・セットを問わず、撮影場所のほとんどがわかりやすい「作り物」でした。冒頭に登場するヒロインが眠る病室に始まり、幼少時代の秘密基地などはかなりのこだわりと手間をかけたものだと思いましたが、結局それは「きれいなゴミ捨て場」という矛盾するものの表現でしかないわけで、こだわればこだわるほどかえって「作り物」であることを強調してしまう結果となってしまいました。

本来、監督の仕事というものは、「そこにあるもの」をきれいに撮ることなのに、本作では「そこにないもの」をきれいに撮ったつもりになっているのです。例えばですが、ヒロインが永い眠りについた病室で、彼女が残した手紙を読む中盤のクライマックスとも言えるシーンです。枕元に置いてある水槽のガラスに、眠っている彼女の顔が反射して映っているという最後のカットがありますが、このカットはほぼ合成された映像であり、それはそれはきれいな仕上がりになっています。

しかし、なんでガラスに映る顔の絵を合成して作らなければならないんでしょうか。このカットは映画監督ならば当然、照明やアングルなどあらゆる工夫をしてカメラで「撮る」べき重要なカットだと思いましたが、映画監督としてはもっとも安易な手法を選択してしまいました。

監督が「撮っていない」映像にどんな監督の想いが詰まってるって言うんでしょうか。本作は、最初から最後まで一貫して「きれいに作られたもの」を撮ったに過ぎない映画であり、映像から伝わってくる作り手の「意志」というものがまったく感じられない映画です。

私は、必ずしもCGなどの映像技術を否定するわけではありませんが、SF以外の実写映画で監督が用いる手段としては懐疑的で、安易な使用は慎むべきだと思います。監督がCG担当のエンジニアに絵コンテを渡している風景が浮かぶことほど興ざめなことはありません。

劒岳 点の記』(2009年 東映)で撮影監督の木村大作氏が紛れもなく「撮った」映像の迫力と説得力が示すのは、そのような安易な「絵作り」が蔓延する映画界に対するアンチテーゼだと思います。

総合評価 ☆☆
 物語 ★★☆☆☆
 配役 ★★☆☆☆
 演出 ☆☆☆
 映像 ★★☆☆☆
 音楽 
★★☆☆

※このレビューは、私がYahoo!映画のユーザーレビューに投稿したものをより多くの人にご覧頂けるように加筆・修正して転載したものです


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