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クライマーズ・ハイ [映画レビュー]

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『クライマーズ・ハイ』
(2008年 東映=ギャガ 145分)
監督:原田眞人 脚本:加藤正人、成島出、原田眞人 主演:堤真一
          Official 
 / Wikipedia  / Kinejun           

2009082701.jpg
(C) 2008 「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ 

私は横山秀夫の原作が大好きで何度も通読しましたが、その多彩な登場人物と次々と巻き起こるエピソードの複雑さから、映像化は至難の業だと思っていました。それにもかかわらず、2005年にNHKで放送されたテレビドラマの出来映えは実に秀逸で、原作世界をしっかり理解した上で挑めば、原作の出来に負けない映像化が可能だというお手本だと思います。

原作があるものを映像化するという作業はとても難しくて、原作どおりに作れば「映像化する意味があったのか!」と言われるし、原作をイジると「原作と違う!」という批判がどうしたって出るものです。大雑把に本作のドラマ版と映画版を類型すると、ドラマ版は原作に忠実、映画版は原作をかなり脚色したものということになります。問題はそれぞれのアプローチが成功したか否かということですが、映画版は大失敗だったと言わざるをえません。

長編小説を2時間余りの映像に集約すると、どうしてもいくつかのエピソードを省かなければなりません。映画が失敗したのはその選択でした。一例を挙げると、望月記者の事故死のエピソードを端折ったのは決定的でした。まずそれにより悠木(堤真一)がなぜ部下を持たない遊軍記者なのかがあいまいになっており、これによって悠木の人物像が希薄になり、見る人によってはただの自信過剰な記者という印象すら持ちかねません。

そして、従姉妹の望月彩子が登場しないわけですから、結末がなんとも説得力のないあっけないものになってしまっています。映画でも最後は悠木に「降りるか、降りないか」という決断を迫りますが、それが「事故原因の記事を後追いで翌日の一面に掲載するのは恥」という理由となると、原作を読んでいる人間からすると「なんでそんなことで?」と思ってしまいます。

原作を読んだことがない人は「そういうもんか・・・」と思うかもしれませんが、冷静に考えてみてください。悠木が「事故原因」を抜かなかったのは、まったくもって社内の問題であって、対外的には北関は毎日新聞以外の新聞社と同列のはずです。そして、事故原因というニュースバリューから考えて、後追いでも一面に掲載しない方がむしろ恥のような気がしますがいかがでしょうか。原作の重要なエピソードを省いてしまったおかげで、悠木の最後の決断に至る過程を、新たに無理矢理創作しなければならなかったわけです。

この映画は、エピソードの選択を誤ると、そこから派生した歪(ひずみ)のようなものがストーリー全体に及んでしまう悪い例だと思います。神沢記者(滝藤賢一)が唐突に事故死してしまうというのも、望月記者の代わりのような安易さが感じられ、これも歪のひとつだと思います。

これが事故現場の再現といえるのか?また、映画化にあたって日航機墜落事故の事故現場を再現したことが話題となりましたが、私は、このことは製作者が原作が持つ魅力を正しく理解していなかったことを象徴していると思っています。まず、そもそも未曾有の航空機事故の凄惨な事故現場を再現して映像化することは、どんなにお金をかけようとも不可能であるということは明白であり、事故現場の再現は安易な話題づくりでしかなかったように思われます。そして、前半部分において最も重要なエピソードは、佐山記者(堺雅人)の「現場雑観」だったと思いますが、新聞記者たちの奮闘を描くことがテーマである本作においては、「活字で表現された事故現場」こそがすべてであり、そこにはそもそも「ビジュアルで表現された事故現場」などは不要なはずです。

原作の活字で書かれた佐山の現場雑観を読んで落涙した人は私だけではないと思います。つまり、本作品の肝は新聞記者が書いた記事を通して読者が事故現場を想像し、「活字の力を体感すること」にあり、映画においてもこのスタンスを踏襲するべきだったと思っています。安易に事故現場を再現してしまったがために、佐山の現場雑観が持つインパクトが半減してしまったことは間違いなく、原作の最大の見せ場のひとつを映像によって潰してしまったのは皮肉なことでした。ちなみにNHKのドラマ版では当時のニュース映像を使用して、「佐山が映った」というセリフを挿入することによって佐山が事故現場に到達したことを巧みに表現しており、佐山の現場雑観が紹介されるシーンでは、女の子を抱く自衛官のイメージカットのみでその情感を表現し切っています。

『金融腐食列島[呪縛]』(1999年)や『突入せよ!あさま山荘事件』(2002年)を撮って、社会派ドラマの演出に定評のある原田眞人監督ですからとても期待していましたが、今回はハリウッド的演出手法が鼻に衝いてしまいました。ガムをクチャクチャ噛んだり、ポケットの中で小銭をジャラジャラするといったことで表現する人物設定のやり方って、向こうの映画専門学校とかで教えてそうですね。他にも「工学部出身の女性記者って!」とか「やけに小奇麗な料亭」とか「地方新聞社にしては立派な社屋とモダンなオフィス」とか、1985年という時代背景を無視した演出に細かい突っ込みを入れたくなり、最低の評価とさせていただきました。

あんまり過剰なハリウッドかぶれも、あるいは逆にハリウッドコンプレックスも考え物です。あくまでもまず「日本人が観る」ということを前提に映画作りに臨むべきだと思います。これだけ秀逸な原作の映画化で実験的手法は勘弁してほしかったです。

総合評価 ☆☆☆☆
 物語 ☆☆☆☆
 配役 ★★★☆☆
 演出 ☆☆☆☆
 映像 ☆☆☆☆
 音楽 ★★☆☆

※ 2010年1月21日、一部を加筆・修正いたしました。
※ このレビューは、私がYahoo!映画のユーザーレビューに投稿したものをより多くの人にご覧頂けるように加筆・修正して転載したものです。

 


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